第二章
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ろ。今日は何もなかったしな」
「まあな」
ブラウベルグがそれに答える。
「今日はな」
「けれどよ」
アルトマンがここで言った。
「もうすぐそこに来てるぜ。わかってるよな」
「イワンがだろ」
「ああ、そうだ」
ハイトゥングに深刻な顔と共に答えた。
「その通りだ。ここにも遂にな」
「難儀なものだな。数年前はこっちがモスクワまで来ていたってのにな」
何か色々なものを入れたジョッキの中のものを口に含んでから言う。
「それがどうだ。今じゃベルリンだってやばいぜ」
「やばいってものじゃないだろ」
ブラウベルグはあのシニカルな笑みをまた浮かべて述べてきた。
「もう終わりさ」
「終わりか」
ハイトゥングはその言葉を聞いて手を止めてしまった。ジョッキの中の酒が空しく波を作ったがそれはすぐに収まった。まるで彼等の話を聞くかのように。
「ベルリンに聞こえてるらしいぜ。パイプオルガンの音が」
「スターリンのあれだな」
「そうさ、まるでレクイエムみたいにな」
ロシア軍のロケット掃射の音である。そのあまりの攻撃の激しさにドイツ軍の将兵達はその攻撃をスターリンのパイプオルガンと呼んでいたのである。
「派手にやってるらしいぜ」
「神様は信じないんだろ、奴等は」
ハイトゥングは言う。それでどうしてレクイエムなのだと。
「それはそれ、これはこれらしいな」
ブラウベルグはそう言い返す。
「俺達を地獄に送る為に奏でてくれてるんだろうさ」
「いらねえな、そんなお節介は」
「まあな」
誰もそんなものは欲しくもない。答えは決まっていた。
「しかしベルリンもそうだとな」
「今あそこは修羅場だろうな」
「じきにここもこうなるぜ」
ブラウベルグはまたシニカルな言葉を口にした。
「イワン共がもうすぐ側だぜ」
「それで陸軍が必死に戦ってるんだな」
ハイトゥングは述べた。
「国民を一人でも多く後ろに逃がす為に」
「そういうことだ。あいつ等の方がましだろ」
ブラウベルグはここであいつ等と誰かのことを口にした。
「まだな」
「程度の問題だろうがな」
アルトマンの声は実に苦いものだった。
「ヤンキー共も大概なものだぜ」
「それでもポリシェヴィキのイワン共よりましさ」
ブラウベルグはそう言う。
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