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青い春を生きる君たちへ
第18話 青い春を生きる君たちへ
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れを分かっていたのか、普通の高校生としての日常を、逃げも隠れもせずに継続していた。
そして、スパコンに設置されたままのウイルスを何とか除去できる目処が立ったのが、2ヶ月前のこと。田中智樹が感づいて、ウイルスを暴発させる事が無いよう、除去作戦は秘密裏に行われた。スパコンの中のウイルスさえ除くことができれば、田中智樹を生かしておく理由もなくなり、この事件は闇に葬り去られる事となる。この時点で、田中智樹のタイムリミットは、あと一ヶ月となった。

急展開を迎えたのは、そのタイムリミットがあと数日に迫った時のこと。あともう少しで除去されかかっていたウイルスが、唐突に起動した。田中智樹の仕業だった。彼は、自分の命を繋ぎ止めるこの命綱が切れかかっている事に感づいていたのだった。公安は一瞬、恐慌状態に陥った。

しかし、情報は拡散されなかった。それも、田中智樹の仕業だった。彼は自らが起動したウイルスの作用を、限定的なモノに留めて、自分1人だけが公安の情報を掠め取る事に成功したのである。公安が大勢のハッカーを雇って、ようやく対抗策を編み出せるほど高度なレベルのウイルスを、田中智樹は高校生でありながら、自由自在に操ってみせたのである。父譲り、いや、父を遥かに超える才能だった。これほどの才能を"処分"せねばならなかった事は、日本にとって、大きな損失だったのは間違いがない。

かくして、日本諜報活動の心臓部に刺さった棘は引き抜かれ、田中智樹はそこから漏れ出した重要機密を抱えて逃走を図った。公安にとっては、後は田中智樹ただ1人を始末するだけで事態を収束させられるという状況になり、血眼になってその行方を追うことになった。しかし、この一ヶ月、巧みに捜査を撹乱した田中智樹の前に、警察も公安も、結局その尻尾を捕まえる事はままならなかった。
彼の協力者であった1人の高校生の密告によって、彼の所在が確認され、始末する事には成功したが、たった1人の高校生を捕らえる事すらできなかった事は今後の反省として活かさねばなるまい。彼がどのようにして、警察、公安、または中共工作員と結託した暴力団の追跡を逃れる事に成功したのか。

もう一つ謎として残るのは、結局彼は何の為に情報を持ち出して、逃走を図ったのか、という事だ。本気で自らの命を守る為に逃走を図ったのであれば、海外諜報員の手を借りた亡命が最も手っ取り早い方法であったのにも関わらず、彼はそれすらも拒否していた。彼の逃亡劇は、逃亡劇そのものが目的になっていたような所があり、だからこそ、捜査を撹乱出来た部分はあったのだが、このような、ある意味非合理的な行動への対処を、今一度想定し直す必要があるかもしれない……



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「……うん、よくできてる
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