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戦友
第三章
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違うね」
「何とでも言え」
 妻や子供、孫達の言葉にも平然として返す。
「人間は生きていれば自然に頑固になるものだからな」
「そうなんだ」
「そうじゃ」
 その如何にも頑固そうな声で返した。
「よく覚えておくことじゃな」
「忘れたいけれどね」
「全く。またしても減らず口を」
 そんなやり取りをしながらメアリーの結婚のその日を待っていた。メアリーは自分には似ていないと思っている。妻、つまり彼女にとって祖母に似ている。穏やかな可愛らしい顔立ちをした小柄な少女であり髪はブロンドで目は緑の木々の色だ。アルフレッドに対しては自慢の孫娘の一人なのだ。
 その孫娘の結婚式の相手について話を聞いているとやはり悪い人間ではないらしい。そのことにまずは安堵して式のその日を待つ。そうして遂にその式の日が来た。アルフレッドは家族と共に向こうの国の教会に向かったのだった。
 その国では正教だ。アルフレッドの国はプロテスタントだ。それでかつては宗教対立もあった。彼の若い頃のあの戦争には宗教対立もあった。人は時として自らと異なるものに対しては著しく不寛容なものになる。それは宗教が絡むと時としてさらに酷いものになってしまう。
 教会の中にはイコンが飾られている。これこそが正教である証だ。マリアのイコンを見ながらアルフレッドは思うのだった。過去と現在のことを。
「正教の家に入っても。抵抗はないんだな」
「何古いこと言ってるのよ」
「またそんなこと言って」
 周りからまた家族達が言ってくる。彼の言葉を笑って否定するのだった。
「だからそんな考えは古いんだって」
「愛は国境を越えるんだよ」
 また今の時代の言葉が出て来た。
「宗教だってね」
「信仰は心を救うものよ」
 これもまた今の時代の言葉だ。アルフレッドの若い頃とは信仰も変わっていたのだ。
「それでどうして愛を縛るのよ」
「そんなのナンセンスだよ」
「ナンセンスか」
 これはアルフレッドの子供の世代の言葉だった。この時代では充分に古い言葉だったがそれでも彼にしてみれば新しい言葉だ。それを聞いてまた複雑な顔になるのだった。
「そう、ナンセンス」
「センスないのよ、そうした考えは」
「じゃああれか」
 アルフレッドはここまで聞いてあらためて家族に問うた。
「センスがあるのは。愛を大事にすることか」
「それと平和」
「戦争しても何にもならないじゃない。それよりも結婚した方がずっといいのよ」
「だからといってわしの側を離れるのはな」
 本音が出た。偽らざる彼の本音が。
「全く。どうしたものか」
「まだ言ってるんだ」
「だからそれは諦めなさいって」
 妻にまで言われたメアリーが生き映しだというその妻が。歳はもうかなりのものだが今でも少女の可愛さを持っているその妻が彼に対し
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