第17話 俺とあいつと彼女の最期
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あ、さ……」
小倉はその先を言おうとして、しかし、高田がゆっくりと首を横に振っているのが見えて、言葉を止めた。言葉を止めた、というより、身体全体が固まったと言ってもいい。それは、拒絶のサイン。
自分と彼女の間に横たわる、埋めようのない隔絶を表すもの。
「……でも、ダメなの。私とあなたは、これっきり……私には、あなたと関係を作っていく、そんな資格は無いのよ……」
「た……高田……」
「……ごめんなさい……」
小倉が最後に見た高田の顔は、悲しみと、ある種の覚悟を決めた毅然さが同居した顔で、これまでで一番、高田らしい顔だった。次の瞬間、その顔がグンとズームアップし、高田が背伸びした事に気づいた時には、小倉の口は高田の、薄く柔らかい唇に塞がれていた。暖かな高田の息吹が自分に注ぎ込まれるようで、小倉はその錯覚に、頭の芯が痺れるような感覚を覚えた。そしてまた次の瞬間、今度は背中に、これは錯覚ではない、物理的な痺れを感じて、その強烈な一撃は小倉の全身を弛緩させた。
立ってる事はおろか、目を開けてる事もできなかった。視界が霞みがかっていき、やがて目の前が真っ暗になっていく。意識が暗闇へと落ち込んでいく中で、小倉は高田の声を聞いた。
「さようなら……幸せに、なって」
その言葉に、返事をする事はできなかった。それが、小倉謙之介が聞いた、高田紫穂の最後の言葉だった。
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