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青い春を生きる君たちへ
第17話 俺とあいつと彼女の最期
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で、頭ごなしに断られもしていない。小倉は、まだ諦めない。畳み掛ける。


「余計な事するのはダメか?そりゃ、俺は田中の協力者だし、俺と田中を会わせるのは、お前の組織の理屈じゃダメだろうな。……でも今、俺はお前個人と話してるんだ。俺がお前の頼み一つ聞いたんだから、お前も俺の頼み聞いてくれても良いはずだろ?組織に対してこんなお願いはできないかもしれん、でも、俺は今、お前個人に頼んでるんだ。お前個人は、俺の頼みに、どう返事するんだ?」
「……」


目を逸らしたまま、高田は唇をキュッと噛み締めていた。まだ答えは出ない。小倉はその横顔をジッと見ながら、顔と顔がくっつきそうになるまで迫った。もうここはゴリ押ししかない。小細工も詭弁も、もうネタ切れだ。そうする以外に、思いを通す手段を知らない。


「頼むよ……最後にあいつと、話をさせてくれ……」
「……」


部屋には2人の、妙に荒くなった息遣いだけが響く。沈黙が続く。小倉はもう言葉は出さず、ただ高田の両肩を掴む手の感触、高田の美しい横顔を覗く視線、それだけで迫った。高田の華奢な肩は少し震えていた。やがて、ゆっくりと、高田の視線が、小倉に戻ってきた。



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この街の郊外には、開発が進められた状態のまま放置されてしまっている区画があった。骨組みだけ出来上がって、それ以上の"肉"が付け足される気配のないビルのいくつかは、まるで屍のようにひっそりとそびえ立ち、建物の墓場のように見えていた。びゅう、と音を立てて、冬の寒風が吹きすさび、鉄骨が軋みを上げる。

そんな中、小倉は数ある屍のうちの一つの、屋上に登っていた。工事用に設置されたのであろう、お粗末な梯子を一人でよじ登っていくのは、強風とそれに伴う建物の揺れも相まって非常に心細く不安に駆られるものであったが、小倉はその歩みを止めない。どうしても行かないといけない場所、どうしても会わないといけない人、どうしてもやらないといけない事があるからだ。

梯子を登りきった小倉は、照明もなく、ただ月明かりにシルエットがぼうっと浮かび上がるフロアに立った。周囲を見回し、目当ての人間の姿が見えないと、大きな声で叫ぶ。


「来たぞ!田中!小倉だ!早く姿を見せろ!」


小倉の声は、ガランとしたフロアによく響いた。欠けた屋根の間から差し込む月の光が、一瞬雲に隠れて途絶える。小倉の声のこだまが収まる。再び月が顔を出し、照らされた周囲がボンヤリと浮かび上がると、先ほどまでは居なかった人影が、そこに現れた。


「やっぱり、来てくれたんだ。ありがとう」
「……」


一ヶ月ぶりに。田中智樹が小倉謙之介の前に姿を見せた。



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