第二章
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第二章
「だがアメリカは違う。最低限の種類のものを大量生産する」
「最低限か」
「戦闘機なら最高で四種類か五種類か」
「それだけか」
香川はそれを聞いて少し驚いた。海軍ではそれこそ十種類は作っていたからだ。
「そうだ。その方が多くのものを生産できる」
「そうだな。確かにな」
一つのものに集中させればそれだけ多くのものを作れる。これは自明の理であった。
「性能のいいものを選んでそれを集中的に作るんだ」
「それだな」
「そう、まずはそれだ」
一つの答えが出た。
「それで多くのものを作る。まずはそれだ」
「それか」
「あとアメリカ自体の技術だがな」
それについても話すのだった。
「確かに凄い。しかし同じもの、時には越えるものを開発できる」
「越えるものをか」
「考えてみろ」
森本は香川を見据えて言うのだった。
「俺達は何を作ってきた。零戦に紫電だ」
「ああ」
海軍の誇る戦闘機だ。彼等は他にも多くのものを開発してきた。そこには絶対の自信がある。その自負を忘れているわけではないのだ。
「アメリカの戦闘機にも負けてはいなかった筈だな」
「そうだ。性能では負けてはいない」
その確信を香川も述べる。
「しかしだ。数だけじゃなかった」
それと共にこれも言う。
「何かが足りなかったんだ。それは何だ」
「技術だけじゃなくか」
「そうだ」
それに気付こうとしていたのだ。
「最低限の品種を大量生産する。しかしそれだけでもない」
「では何だ、それは」
「わからない」
香川はこう述べて首を横に振るだけだった。
「何なのかな。しかしだ」
「しかし?」
それでも一つ気になることがあった。それだった。
「アメリカ軍の兵器の稼働率はかなり高い」
「!?そうなのか」
森本はそれを聞いて目を鋭くさせた。これは彼の気付かないことであった。
「ああ。我が国のそれよりもずっとな」
「整備兵に問題はない筈だ」
森本はまずは整備兵について言及した。彼等にも絶対の信頼を置いていた。
「彼等は優秀で真面目だ。だから」
「そうだ」
そしてそれは香川も知っていることだった。否定できるものではない。
「彼等もその力を存分に出している。確かにな」
「では一体何だ」
森本にはわからない。だからこそ問い返す。
「整備ではないのなら」
「設計ではどれも故障の多い兵器も部品もない」
「うむ」
それも自信があった。これは自分達の主観だけでなく同盟国のドイツ軍からも言われていたし最近ではアメリカ軍にも言われている。日本の技術による兵器は確かに素晴らしいと。
しかしここで香川はあることに気付いたのだ。ドイツ人は手放しであったがアメリカ人は高評価の中にも含んだものがあった。そこが引っ掛か
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