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戦国異伝
第百九十一話 水攻めその二

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「わかったな」
「はい、畏まりました」
「それではその様に」
「むしろ外じゃ」
 毛利の援軍が相手だというのだ。
「外のあの者達を寄せ付けずじゃ」
「城を孤立させる」
「そうさせてですな」
「そうじゃ」
 そのうえで、というのだ。
「城を攻める」
「では殿」
 竹中がここで信長に言って来た。
「これより」
「城を囲んでじゃな」
「はい、それがしも竹中殿とお話しましたが」
 黒田も信長に言って来た。
「あの城は力攻めでは攻めきれぬので」
「攻め落としても多くの兵を失います」
 竹中がまた言う。
「ですから」
「それで、じゃな」
「はい、あの城には水が多いです」
 黒田がこのことを言った。
「ですから」
「水か」
「はい、水です」
 そこだというのだ。
「水攻めにしましょう」
「そうするのじゃな」
「水攻めならばです」
 これならとも言う黒田だった。
「力攻めとは違い兵を失わず」
「かかる時間もじゃな」
「かえって少ないです」
 それ故というのだ。
「これがよいかと」
「そうじゃな」
 信長も黒田のその言葉に頷いた。
「それではな」
「今より」
「皆の者、まずは城を囲め」
 その高松城をと言う信長だった。
「そのうえで城の周りにじゃな」
「はい、堤を築き」
 黒田はまた信長に答えた。
「そうしてです」
「あの城を水で満たすな」
「幸い今は雨が多いです」
 季節的にだ、そうした季節だ。
「ですからあの城は一雨来れば」
「それでじゃな」
「忽ちのうちに水に覆われます」
 そうなるというのだ。
「ですから」
「うむ」
 信長は黒田と竹中の話に頷きだ、大軍を高松城の周りに配させた。そうして城を完全に取り囲んでからだ。
 外への守りを固めた、それから。
 城の周りに堤を築いた、城の兵達はそれを見て怪訝な顔になった。
「何じゃ、一体」
「どういうつもりじゃ」
「城の周りに堤を築いておるぞ」
「何を考えておるのじゃ」
 彼等はわからなかった、だが。
 それを見た清水は眉を顰めさせてすぐに言った。
「いかん」
「敵が堤を築くことが」
「それがですか」
「そうじゃ、いかん」
 こう言ったのである。
「ここは何としてもじゃ」
「堤をですか」
「壊すべきですか」
「敵に堤を築かせるな」
 間違ってもというのだ。
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