暁 〜小説投稿サイト〜
不死の兵隊
第六章
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
な」
「確かにそうですが」
 ロシュフォールもリシュリューに応えて述べた。
「ですが戦いによって何かを得られるのならば」
「それ自体は構わない」
 冷徹なまでに現実主義者だと言われているリシュリューである。戦争もその為の手段として当然と考えていた。新教徒と手を結ぶのもそうだ。しかし彼は無益な話は好まなかったのだ。
「だが。何も得られないならば」
「行う意味がないと」
「何もかもが無限ではないのだ」
 彼はこうも言う。
「それをいたずらに消費するというのはな」
「では我々はそれを避けましょう」
 ロシュフォールはこうリシュリューに進言した。
「そうして勝利を手に」
「そうあるべきだ」
 リシュリューはロシュフォールの言葉を受けてまた述べた。
「常にな。戦争も政治も」
「はい、それでは閣下」
 ロシュフォールはここでまた彼に対して言った。
「私も。戦場へ」
「活躍を期待している」
 腹心の部下にそう告げた。一見すると何の感情もないがそこにはこの二人だけのものがあった。既に余計な感情なぞ不要な程の信頼関係があったからだ。
「そしてフランスに栄光を」
「わかりました」
「それにしてもだ」
 話が一段落ついたところでリシュリューは呟くのだった。
「人の世の中というものはわからないな」
「といいますと」
「有り得ないことが時として起こる」
 彼が言うのはそれであった。
「どうにもこうにもな。今回もまた」
「それが世の中というものなのでしょう」
 ロシュフォールはいささか達観したような言葉をリシュリューに述べた。
「結局のところは」
「死してもなお戦う兵達もか」
「そうです。彼等は怨みを飲んで死にました」
 これは容易にわかることであった。そうでなければ死んでもまだ戦うわけがないからだ。
「それを忘れられずに出るというのもまた人だからです」
「人だからか」
「人とは不思議なものです」
 ロシュフォールはこうも言う。
「時として怨みを永遠に忘れないこともあります」
「そうだな。それはわかる」
 リシュリューも伊達に枢機卿、宰相まで登り詰めたわけではない。過去に様々な陰謀を企てたり自身もその標的になったことがある。自分自身がそうした経験があるからこそわかることであった。それは黒い意味での理解であったがそれでもであった。
「私もな」
「それが出たのが今の話です」
 それがロシュフォールの考えであった。
「それだけのことですが」
「されどだな」
 そのうえで言うリシュリューであった。
「今度の話は」
「はい、その通りです」
 ロシュフォールは今度は主の言葉に対して頷いた。
「そういうことです」
「わかった。せめて」
 そうして言うリシュリューであった。
「戦死者は供養し
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ