第16話〜中間試験に向けて〜
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「ッ!?誰か来たみたいだ・・・デュバリィ、こっちに」
「ちょ、ちょっと!引っ張らないで下さい!」
そこはかとなく気まずい空気が漂う中、何者かの気配を察知したケインがデュバリイの手を掴んで適当な木の裏に隠れる。
「・・・ケイン。いるのは判ってるわよ。大人しく出てきなさい」
聞えてくるのはZ組担当教官、サラの声だった。よりによって今一番出くわしたくない相手に会ったケインは少なからず動揺するが、小声でデュバリイに今日は帰るように懇願した。ここで教官を彼女を引き合わせるのは具合が悪い。
「俺が引き付けるからそのうちに・・・!」
「次来たときは、分かっていますわよね?」
「ああ、必ず手合わせするよ」
「絶対、絶対ですわよ?」
「わ、分かった。分かったから(この状況は・・・胃に悪いな)」
「もう一人いるのも分かってるわ。出てきなさい」
なかなか引き下がらないデュバリイに小声で言葉を重ねていたケインだが、教官の一言で彼の胃はさらに悪化した。これ以上の抵抗は無理そうなので不本意ながらその指示に従うことにした。
「何でアンタがここにいるのよ?」
「それが・・・デュバリイは俺に会いに来てくれたみたいで」
「あら、そうなの?」
「ち・が・い・ま・す・わ・よ!!」
「ちょっ、デュバリイ・・・」
ここは嘘でもうわべでもいいから同意するところではないだろうか。剣での勝負が目当てなら間接的には会いに来たことになるわけで云々をケインが考えていると、サラの温かくも何か言いたげな眼差しに耐えられなくなったのか、デュバリイがさらに声を張り上げる。
「わたくしは、この剣士を跪かせに来ただけでそれ以上の理由なんかありません!!」
「なぁ、デュバリイは俺が嫌いなのか?」
「す、好き嫌いの問題ではなく・・・」
「俺は好きだよ」
「なっ!?」
「君の剣が」
「ややこしい言い回しをしないで下さい!!」
倒置法で目的語を強調しただけなのに怒られてしまったケインは、頭に疑問符を浮かべながらぎゃあぎゃあと騒ぐデュバリイを宥めている。しばらくすると、もう熱いぐらいサラの視線が自分に向いているのに気付き、神速様はお帰りになったが。
「さて、俺たちも戻りましょうか」
「ええ、話したいことが山ほどあるし」
「・・・お手柔らかにお願いします」
何事もなく戻ろうとしたケインだが、当初の目的を忘れるほどZ組担当教官は甘くなかった。この後、寮を抜け出す常習犯がかなりの間説教されたのは周知のことだろう。
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