第16話〜中間試験に向けて〜
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し、旧校舎付近のベンチに仰向けになった状態で独りごちる。途中でアレスが差し入れてくれた手作りのピラフで夕食を取った以外は彼もマキアスもノンストップでファミィに勉強を教えていたため、ずっと室内に籠っていた。今日ぐらいは夜風に当たりたいなどと少々ロマンチックなことを考えても許されるはずである。誰にも言わないはずの言い訳を心の中で呟きながらケインは目を閉じた。
「・・・ん・・・・・・」
覚醒したケインが上体を起こすと、心なしか辺りの暗闇が濃くなっている気がした。どうやらいつの間にか寝てしまったらしい。
「こんな所で寝ているなんて。だらしないったらありませんわ」
「あれ、デュバリィか。俺どのぐらい寝ていたんだ?」
「し、知りませんわよそんなこと!」
ベンチの近くから女性の声がしたケインは、そちらに目の焦点を合わせて寝ぼけた頭で話しかけると怒鳴られてしまった。甲冑に身を纏った茶色い髪の女性。神速のデュバリィと呼ばれる剣士で、ケインの好敵手でもある。
「な、何をジロジロと見ていますの?」
「いや、今日ちょうど君のことを考えていたんだ。寮を抜け出すとこんな偶然もあるのかな。会えて嬉しいよ」
「・・・貴方はよくも次から次へとそんな歯の浮くようなことが言えますわね」
「???」
ケインとしては思ったことを偽りなく言っただけなのだが、デュバリイはジト目で意味深な台詞を返してくる。
「・・・まあいいですわ。ここで会ったが百年目!今日こそ跪きやがれですわ!!」
「今から勝負するのか・・・けど、一つ言わせてくれないかな?」
「?何ですの、それは?」
「俺、得物は自室に置いてきたんだよ」
明後日の方向を向き、右頬を掻きながら断りを入れるケインの一言に、3秒ほど間を置いてから「はあぁ!?」というデュバリイの驚きの叫び声が続いた。
「し、信じられませんわ・・・」
驚きに次いでわなわなと震えていた神速様は、やがて諦めたようにがっくり肩を落とす。呆れられてしまったのだろうか。別段素振りをしようとしたかったわけではなく、単なる小休止のつもりだったと言い訳すれば納得してくれるのだろうか。
「え〜っと、せっかくだから何か話さないか?たまには剣以外で語るのも悪くないと思うんだよ」
「・・・貴方とお話しすることなんかこれっぽっちもありませんわ」
「そうか・・・少しは君自身のことも知りたかったんだけど」
寮を抜け出した時点で問題なのに、今更戻って剣を取ってくるのはリスキーな事だろう。勝負の代わりに神速と呼ばれるまでに至ったデュバリイの剣の道の一端を知れればと思ったがそれも叶わないようだ。背景を考えれば仕方ないことだろう。ケインは哀愁混じりの目を彼女に向けていた。
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