第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日・夜:『剣理:殺人刀』
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イタクァ=ザ・ウェンディゴ》』、今更ながら信じられない速さだった。
「何よ、コレ?! 話が違うじゃない!」
「ど、どうするんです、蔵人さん!」
蛇髪の女と触手足の男が、片膝を突き右の顔面を押さえて蹲る槍騎士に問い掛ける。
その装甲の内側からは今もまだ此方を見据える七つの紫色の、憤怒に満たされた炯々たる鋭い眼光。低く唸る毒虫のような、怨嗟の響き。殺意が形をなしたような、その邪悪。
「……死にたくなければ失せろ。黙示録を置いて逃げるなら、俺は追わない」
「ひっ、く……」
「ぐう……!」
上段に長谷部を構えたまま、告げる。精一杯の虚勢を張りながら、余裕じみた態度で出口を顎でしゃくって。
形勢が傾いたと見るや、敵は瞬く間に意気消沈した。そんなものだろう、自分の研鑽ではなく、他者から与えられたモノで粋がる小者など。
ちら、と己の魔導書を一瞥した。一瞬、天秤に掛けたのだ。自らの命と、『魔導書を置いて逃げる事』を考えたのだろう。
──そして無論、『見逃す』などは方便だ。背中を見せれば、殺す。殺さなければいけない。この作戦の報酬は『グラーキ黙示録全巻』、そして魔導書とは自ら持ち主を選ぶモノ。現状、生き残っている全員が、その持ち主。
故に、鏖殺せねば禍根が残る。
一瞬、苦味に苦笑する。『柳生新影流を遣って人を殺す』、己の因果に。思い出したのは、紫煙と灼けた金属の匂いを染み付かせた義父の背中。
『何、“魔剣”を教えろ? 阿呆か、お前は……最低でも十年は早ェ』
当たり前のように、金槌染みた拳骨が返る。冗談ではなく、本当に目から火花が出るように硬い拳だった。
今にして思えばソレは、コレを予期してのようにも。
『お前は先ず、刀を扱えるようになれ。そうだな……新影流が良いだろう。あ? 何でか、だと? 決まってんだろうが、あの流派の真髄はな────』
二度目の拳骨は、何で殴られたのかは分からなかった。今度は、喋っている途中だったので舌を噛んだ。凄く痛かった、それを今も思い出す。
《“活人刀”気取りか、新影流の小僧。殺人機風情が、誰かの命を救おうなどと! 浅はかにも程があるわ!》
「ッ…………!」
──結局、“殺人刀”にしか留まらなかった俺を叱っているのではなかろうか、と。
地の底から響くような槍騎士の声に、刹那、認識を取り戻す。呆けている場合ではない。未だ、窮地なのは此方の方。
《貴様らは向こうに行け。この餓鬼は、私が殺す》
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