遠い海と年月
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それが見えるのは、もう少し後だろう。
自転車をこいだ先に見えてきたのは人の海だった。
この都会に馴染まない展望台は、僕の好きな場所だった。
ねぇあそこ見て、と僕は言った。
指を指す先に一つのファミレスがあった。
客が店員に向かって怒鳴っているように見える。
また、その隣でサラリーマンがスマホをいじっている。
あの場所もそうだ、と言って指を指す。
会社の窓の、ブラインドの隙間から、上司のような人が部下に怒っているようだ。
交差点では人が早歩きで動き、
また、アパートではわずかな喧騒が見える。
「やっぱり戦場だよ」
彼は言った。
「そうかな?」
「そうとも、こんな中に入っただけで嫌になりそうな場所は嫌だ」
「でも僕も君も、後七年くらいしたらそこに入るんだよ?」
「うん、知ってる。無理なのも分かってる」
彼は諦めたような視線で呟いた。
「もういやだなぁ、こういうの」
「仕方ないよ、戦場だもの」
あらしにまきこまれるのは、しばらく先だろう。
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