第5部
紅桜編
第66話 初めて使うキャラは大概扱いに苦労する
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あの狂乱の貴公子とも呼ばれた桂小太郎が、まさか辻斬り如きにやられるなんて。いや、先も不安になった通りだが、その辻斬りが相当の手練れであれば納得が行く。
だが、それならば桂の遺体が此処にある筈だ。幾らなんでも死体を運んで移動したら夜中でも目立ってしまう。担いでいこうにも同じ事だ。
だが、此処周辺ではそんな話は聞いていない。となればまだ望みはある。
そう思っていた新八の横で、『もう手遅れかも…』と言った板を掲げて深く沈み込んでいるエリザベスの姿があった。
そんなエリザベスの姿を目にした途端、新八は切れた。
「この馬鹿野郎!!」
怒号を挙げながら新八の右ストレートが炸裂する。唸りを挙げたそれはエリザベスの側頭部にクリーンヒットし、くるくりと宙を回転しながら口から血を撒き散らし、そのまま顔面から地面に激突した。
いきなりの攻撃に全く対処が出来ず、ピクピクと震えているエリザベスの胸倉を掴み上げて新八は睨んだ。
「あんたが桂さんを信じなくてどうすんだよ! あんたが諦めたら誰が桂さんの無事を信じてやるんだよ! それでもあんたは桂さんの親友かぁ!? 見損なったぞエリザベス!」
新八の目には桂の身を案じる気持ちと、エリザベスに対する怒りの入り混じった感情が伺えた。彼とてほんのちょっぴりだけ不安な所もある。だが、其処で諦めてしまえばそれまでの事だ。
なのにエリザベスは早々からあきらめムードを出してしまっている。これでは余りにも桂がかわいそうでならなかった。
「おい、何か言えよ! だんまり決め込んでたらわかんないだろ? どうなんだよ!」
更に新八の脳内のアドレナリンが急速に加速しだしたのか、より一層激しくエリザベスをののしっている。仕舞には往復張り手なんかもかましている始末だった。
普段とは全く違うキャラになっている新八。彼も何気に熱血漢な所があるのだろう。
だが、何事もやりすぎは禁物である。特にこの場合は―――
【いってぇなぁ】
「へ?」
【いてぇんだよ。いい加減離せよ、ミンチになりてぇのか?】
突如、エリザベスの中から不気味な声が響いた。そして、くぱぁと開いた口の中から覗かれる不気味な視線。その視線を目の当たりにした途端新八の中でさっきまで渦巻いていた熱意が一気に冷めて行った。
ぱっと手を離し数歩後退し、その場でいきなり深く頭を下げだし「すすす、すいませんでしたぁぁ!」と、かなり情けない感じで謝罪してみせた。
そんな新八を尻目にエリザベスは服についた汚れを払う仕草をし、地面に這いつくばっている新八を逆に睨み返した。
恐る恐るエリザベスを見上げる新八。そんな新八に対し、エリザベスは口からペッと血糊を吐き出して背を向けた。
『後でコロッケパンとコーヒー牛乳買って来い。5分でな
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