第5部
紅桜編
第66話 初めて使うキャラは大概扱いに苦労する
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どちらにしてもとても道を聞ける状況ではない事が理解出来た。
「定春、もしかしたら此処って相当危ない所かもしれないね。見つかったら危ないから静かに行くよ」
なのはが口元で人差し指を立てて静かに行くと言う仕草をする。それを見て定春も声をあげず静かにうなずいて見せた。
その後もなのはと定春は道を歩く浪人に見つからないように出口を探し歩き回っていた。
が、只でさえ迷い易い場所で更に浪人の視線に気を使いながら移動するのだから更に道に迷ってしまったのは明白な事であった。
「う〜〜〜、全然出られない。それにお腹も空いてきたし……どうしよう?」
腹部を押さえながら途方にくれるなのは。定春が居てくれるから寂しさは幾らかまぎらわれているが、それでも寂しい事に変わりはない。
何せ話し相手がいないのだから。
そんな感じで宛も無く歩き回っていた彼女であったが、ふとその足を止める事となった。
彼女の目の前にその歩みを止める程の代物があったからだ。
「うわぁ、おっきぃ……」
なのはの目の前にあった物。それはとても大きな船であった。輸送船かと思われたが所々に武装が見受けられる事から恐らく軍艦だと言うのが分かった。
だが、何故此処に軍艦があるのだろうか? 食糧の調達でもしているのだろうか?
首を傾げながらそう考えていた時だった。
(……しゃ……べ………しゃ)
「ん?」
声が聞こえた。耳にではない。脳内に直接響くように聞こえてきたのだ。その証拠に隣にいた定春には聞こえた気配がしない。どうやら自分にだけ聞こえるようだ。
「誰? もしかして、私を呼んでるの?」
(しゃ……夜叉………其処に………いるのか?………夜叉?)
「夜叉? さっきから何言ってるんだろう。私の事を呼んでるっぽいけど、でも何で夜叉?」
さっぱり分からなかった。自分にだけ声が聞こえているのだから自分を呼んでいるのだろうと思われるのだが、しかし何故夜叉と呼ぶのだろうか?
さっぱり訳が分からなかった。しかし、分からないとなるとどうしても知りたくなってしまうのが人の本能と言うものだ。
そして、その答えは目の前にある巨大な軍艦の中にありそうだった。
「行くしかないよね……でも、ちょっと怖いなぁ」
辺りはすっかり暗くなった為でもあり、目の前に映っている巨大な軍艦が一層不気味に見られた。
だが、胸の内に芽生えた恐怖心を無理やり振り払い、きっとその軍艦を見つめた。
ここでビビッてどうする。私はあの万事屋銀ちゃんの一員なんだ。これも依頼の一旦だと思えば決して怖くない。恐れず行け!
自分自身にそう叱咤し、向かおうとする。が、そんななのはを定春が止めた。
着物の裾を噛んで進ませないようにしていたのだ。
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