想起幕 黒の少女が願う世界
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ます。乱世を越えるに於いて重要かと言われればそうでもないですからね……でも張コウは……定軍山の戦いでは必須なのに」
またモニターを見据えて、彼女は苛立たしげに舌打ちを鳴らした。
「故に……世界改変の為には虚数外史の張コウ。実数と虚数に存在し得るこの子の生存は絶対に外せません」
カタリ……とキーボードを鳴らすと、モニターの反面が切り替わる。幾多もの世界の映像が映し出されていた。
どれもに、光を反射してキラキラと輝く白い衣を纏った少年が乱世に生きていた。その大半に鎌持つ揚羽が一羽、舞い踊る。少年とは決して相容れないと、常に敵対の道を選びながら。
「外史群体レベルでの実数外史への影響はまずまず。張コウの生存によってゼロ外史にも近付き、限られた実数外史にこの外史の張コウが出現。これで本物の御使いに対する復元力が出来上がります」
黒髪の軍師が、茶髪の義従が……どちらも少年とは相容れぬと反発し嫌悪する。故に……彼女達に救いなど無い。甘い世界で彼女達だけは絶望に堕ちていく。
また一つキーを叩くと、元の画面に戻った。
「まあ……この事象で変えられなかった場合の最終手段の予備戦力ですが……」
ふう、とため息を吐いた少女は、椅子にもたれ掛かって船を漕ぐ。
遠い目をしながら、ナニカを憂うように。
「第一は世界によって捻じ曲げられた張コウの運命改変に成功。第二は第一によって捻じ曲がった公孫賛の運命介入に成功。第三は……天の御使いによって捻じ曲げられた乱世の改変に……」
ふるふると首を振ってまたため息を一つ。
「私達のような管理者が何処かの勢力や特定の人物をエコヒイキした時点で乱世は茶番にしかなりません。本物の御使いが願ったモノには、“この世界はこの世界に生きている人のモノだ”、という想念が含まれていましたからね。
例え救われない結果であろうと、自分の選択を受け入れて前を向き、その世界で幸せを手に入れる……それが出来たのは覇王だけ。別れの時に御使いに縋りつかなかった覇王だけ。御使いが居ない世界でも前を向いて平穏を作り上げようとした、覇王だけ。だから、この世界を変える為には、覇王と……」
黒衣の男を憂い気に眺めて、黒の少女を哀しげに眺めて。
「……思考にそういった罪悪感や異物に対する嫌悪感が強かったから、この虚数外史に対する適正があったのでしょう。管理者に管理された箱庭の平穏などいらない、自分達の手で掴みとる平穏を……それこそあなた達が世界を変えられる証です」
大きな疲労感からか、少女は一つ目を瞑る。
「あの男なら、今回の官渡で世界の流れを大きく変えるでしょう。恋姫外史、それも魏所属事象で有り得たはずの戦が消えてしまいます。そして……蜀所属のギリギリに御使いと
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