想起幕 黒の少女が願う世界
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なたの心の中で、生きさせて」
死んでしまっても、ずっと一緒に居た明の中で生きられるから。
私はそうして、ずっと世界に抗ってきたから。
十一回、全てのあなたを覚えてる。大事な大事な思い出が、私に力をくれたから。
「この世界を嘘にしないで。確かにあった想いを嘘にしないで。あなたの幸せが私の幸せ……あなたの為に、私の為に」
記憶に残れば想いは生きて、この世界に生きた証が残される。
いつでも私の側にはあなたが居てくれた。あなたの笑顔の為に頑張れた。
あなたが生きた証を心に刻んでいたから……一度目の乱世も、二度目の乱世も……何度だってあなたが死んでしまっても越えられた。
「そうすれば一人じゃないよ。せめてあなたと共に、生きたいの」
前を向いて歩けないあなたの心に寄り添うから、どうか幸せになって欲しい。それが私の願いで、救い。
「……お願い、私の大切なお姫様」
最後の言葉の後、明はもう一度、口づけを落としてくれた。
甘い甘い口付けは、私が大好きな彼女の体温を分けてくれて……幸せだ。
グイと涙を拭い去った音の後……彼女は笑った。もう目は見えないけれど、きっと私の大好きな笑顔を浮かべてくれてる。
「ふふっ……りょうかい、だよっ……あたしの大切な、お姫様」
優しく地に私を寝かせた明は立ち上がる。寂しさが少し湧いた。ずっとくっついていたかった。
ごめんね、一人にして。でも私やあなたと同じ秋兄なら……きっとあなたを支えてくれる。繋ごうとした絆も、あなたを暖かく支えてくれる。
もうあなたは、一人じゃない。
ただ……明は、最期に私の予想を大きく超えた。
「でも……秋兄だけになんか……させてあげない。あたしも夕の命を食べる」
嘗て、世界が変わってしまう前、この子は皆の想いを繋いでいた。
死んでしまう人達の想いを繋いで生きていたいと、誰かの居場所は奪いたくないと叫んだ彼女に……きっと戻れたのだ。
「……ありがと、明……大好き」
嗚呼……私は救えた。彼女を、少しでも救えた。この命を食べさせて、彼女を救える。それがこんなにも、嬉しい。
幸福感に満たされていく心。脳髄は白が侵食し、それでも彼女を想ってる。
でも、この世界だって私は嘘にしない。この世界で生きていた私も……私だから。
「秋兄……最期に、あの言葉が……聞きたいな」
秋兄、あなたの事も好きになった。
これからあなたにはたくさんの絶望が待ってるかもしれない。
私みたいに、思考を縛られたらきっと動けなくなる。絶望して、壊れてしまうかもしれない。他にも誰かいるという希望を探そうとするかもしれない。
だから……私は何も言えない。この残酷な世界の事も、私があなたと同じだという事
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