20話:戦士の誓い
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毛利小五郎と稲田瑞穂はとある事務所の中にいた。看板には毛利探偵事務所と書かれている。
誰とも出会わずに来れたのは幸運だった。
「どうします? ここで待ってるとしますか?」
と、瑞穂。
小五郎が言うには誰かがいたような形跡はあるらしい。だが中には誰もいなかった。
「‥‥そうした方が安全だろうな」
しかし、小五郎は焦りを隠せない。
早く娘の無事を確認したい。
小五郎としては、メモを残して違う場所に探しに行きたい。
しかし、今それをするのは難しい。
自分だけならまだしも瑞穂の安全を確保しつつ、というのが枷になっている。
瑞穂本人はいざとなったら戦う気はある。小五郎も本当にそうするだろうな、とここまでのやり取りの間で確信している。
だが、いくら狂気が後押ししているからといって、瑞穂が強いとはお世辞にも思えない。
体格や身のこなしを見るだけでなく本人にも一応格闘技などの経験はあるかどうか聞いてみたが、案の定素人だ。支給品も武器に使えそうなのはナイフのみ。
おまけに電波が災いして舌先三寸で逃げるという真似もできそうにない。
はっきり言えば足手まといなのだ。
かといって見捨てるという選択肢はかつて正義感溢れる刑事だった小五郎の中にはない。
‥‥どうしたものか。
「私のことは気遣わなくても大丈夫です」
そんな小五郎の言葉を読んだかのように瑞穂は言った。
「しかし‥‥」
「私は別行動でも全然構いません。前回もずっと一人でやりましたし」
「だが、もし殺し合いに乗った参加者に襲われたりでもしたら‥‥」
「その時は戦いますね」
ほら、やっぱり。
「だが、相手はどんな凶器を持っているかわからないぞ?」
「‥‥確かに。正直なところアブラ・マズダ様の助言の無い状態で私がどの程度の力を出せるかは不安です」
解釈はどうあれ、瑞穂は小五郎の言わんとすることを理解した。
しかし、と彼女は続ける。
「それは今、あなたが一番優先するべきことではないはずです」
「‥‥‥」
思わぬ反論に押し黙る小五郎。
「あなたが優先するべきことは娘さんの保護。そのために探しに外へ出ることです」
「だが、もし蘭とすれ違いになってしまったら‥‥」
「その時は私が説明します」
‥‥それは不安だ。色々な意味で。
だが、意外といい案なのではないか、という気もしてくる。
瑞穂は電波ではあるが、べつにそれしか無いわけではない。殺し合いという状況において微塵も動揺していないのは評価できるし、蘭と出会っても彼女を不安にさせたり疲れさせたりすることはあっても最悪な状況に導くようなことにはならないだろう。
まあ、本音を言うと小五郎は焦っていたのだが。
「‥‥わかった、そうしよう。だがもし蘭が来てもあまりアブラ・マ
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