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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第三十四話 ユーフォリアン
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/Victor
「俺からも聞かせてもらうぜ。あんたじゃなくて――お前だよ。ユースティア!」
臙脂色の兵装をした少女兵が、ジランドを窺った。
「さっさとすませろ」
「承知してます」
言うや、メイスは兵卒用のマスクを脱ぎ捨てた。素顔を晒した。
本当に兄さんと同じ目、同じ髪の色。尖った眼光さえ、兄さんがメガネの奥に隠してきたものと同じ。
「お前なら分かるだろう。ジランドがやってんのは、エレンピオスに帰るのには余分な戦争だ。なのにどうしてジランドの肩を持つんだ!」
「余分なんかじゃない。ぜんぶ必要だからやってる。帰ったって、待ってるのは終わったセカイ。そんな国にアナタたちを帰せない。ボスも、
源霊匣
(
オリジン
)
も、〈クルスニクの槍〉も、エレンピオスが生き永らえるために必要な人材で資材。壊させないし、殺させない」
メイス――ユースティアの蒼眸が私を捉えた。
「直接会うのは初めまして、ね。『ヴィクトル』になったルドガー・ウィル・クルスニク。生きて逢えないはずのもう一人の叔父貴。ワタシはユースティア。ユースティア・レイシィ。アナタのお兄さんの娘よ」
レイシィ、だと? まさかこの娘の母親は……!
「とーさまはアナタを救いたくて、かーさまにワタシを産ませて、歴史を変えようとした。そのくらいにとーさまはアナタが『世界』だった。――それだけ。アナタがここで死んでも生き延びても、ただ覚えていて。とーさまが、ユリウスがルドガーを心から愛してたコト」
ユースティアがグローブから取り出したのは、骸殻能力者の時計。
兄さんと同じ、銀が、煌めく。
閃光が晴れたそこには骸殻をまとったユースティア。
スリークォーター……一人分の時計で、あの歳の少女が? 俺や兄さんでさえ、本当にギリギリまでハーフ以上に上がれなかったのに。
「ワタシはアルをエレンピオスへ帰すの。家族みんなで。レティシャお母様は間に合わなかった。でも、アルと、おじさまだけは。今のワタシはそのためだけに生きてる。今アルがそっち側にいるのと同じ」
メイスはフリウリ・スピアをアルヴィンに、私たちに、正眼に向けた。
「だからワタシはアナタたちの敵になる」
/Eustia
槍の刃先がぶつかり合って、擦れて、弾き合った。
ワタシは下がる。フル骸殻の叔父貴も下がる。
近くで二つも乱戦が起きてるのに、聞こえるのはワタシ自身と叔父貴の荒い息遣いだけ。
――強い。とーさまと同じか、それ以上。これが実力だけで『最強』を勝ち取った男。
でも、負けない。
ワタシがこんなとこで挫けたら、かーさまが、泣いちゃうから。
ワタシがシアワセになれないと、かーさまが、悲しむから。
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