マブラヴ
0856話
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違います。私は何もされていません」
感情の薄い声でそう告げる社。……なるほど、そういう事か。
「お前がこの前俺の中を探ろうとした犯人か。まさかこんな子供だったとはな」
「すいませんでした」
再びペコリと頭を下げる社と、それを見て納得の表情を浮かべる夕呼。
どうやら俺が社を責めていた訳じゃないってのは理解したらしい。
「ふーん、そういう事。……でも、社が人に自分から積極的に関わるなんて珍しいわね」
その言葉に、再び社のウサギの耳飾りがピョコリと動く。
……本当に、どういう作りになってるんだろうな、あれ。社の感情に反応して動くとなると、実は念動力で動かしていたりするんだろうか?
「この人は、私とは比べものにならない程大きい人、ですから」
「……ま、いいわ。謝って気が済んだんならもういいでしょ。ほら、行くわよ。一応あたし達も色々と見ておかないといけないんだから。特にバッテリーや推進剤関連のパーツは今回の件の交渉にも使えるでしょうし」
「……はい」
社を引っ張って連れて行く夕呼の後ろ姿へと声を掛ける。
「言っておくが、お前が俺の要求した件を実行しない限り、この会場にある物は日本帝国には渡らないか、渡ってもこの世界の中では最後の方になる。それは理解しているだろうな?」
俺の言葉をその背で受けた夕呼はピタリとその場で足を止め、先程よりも鋭い視線でこちらを睨み付け、口を開く。
「分かってるわよ。ただ、アクセルも忘れてないでしょうね? 飛鳥計画の件を上手くやったら日本の優先順位を上げるって」
……へぇ。随分と苦労しているらしいとは思っていたが、飛鳥計画の量産試作機を手に入れる算段でもついたのか?
これはちょっと予想外だった。この件に関しては半ば無理だと思っていたんだが。
「そうだな、実行できたら約束は果たさせて貰うさ。大魔王は嘘をつかないってな」
「……大魔王?」
夕呼がそう問い返し、再び口を開こうとしたその時。
「ぎゃああああ、潰、潰れる、潰れる!」
そんな声が周囲へと響き渡る。
そちらへと視線を向ければ、客の1人が会場の床へとへばりつき、まるで道路で車に轢かれて潰された蛙の如き格好をとっている。
そして男の近くにはパーティドレスを着て、虹色領域の腕輪の嵌まった手を男の方へと向けている千鶴の姿。
「悪いが話はここまでだ。ちょっと騒ぎがあったみたいだから俺は行かせて貰う。……ゆっくりと見ていってくれ。飛鳥計画の件を上手く進める為にも。社もまたな」
「ばいばい」
「あ、ちょっ、アクセル!」
俺の方へと小さく手を振っている社と、俺を呼び止めようとする夕呼をその場に残し、背中で夕呼の声を聞きつつ、騒ぎになっている方へと向かう。
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