暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
道化師が繋ぐモノ
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悲しい戦い方するなとか、誰かが泣くから簡単に命を捨てるなとか……そんなありきたりで綺麗な事を全く言わないあなたの隣は、凄く居やすいよ?

 同じような理由で戦ってるし、似たような性格してると思うけど、それだけじゃない気がする。
 力付くで奪って、力付くで与えて、何も言わずに寄り添って、何も言わずに合わせてくれる。そんな冷たくて優しいあなたは、きっと戦場じゃなくてもそんな人だと思うんだ。
 楽しくて、暖かくて、下らなくて、でも大切で……そんな日常が出来上がると思うんだ。

――だから、さ。この戦いが終わったら……あなたのしたい事、手伝ってあげる。

 そんな日常こそ、夕が求めて止まないモノなんだから。否、否……これは……“あたしがしたい事”みたい。

――ならあたしも……その輪の中に居れてくれると嬉しいな。

 嘗て、桂花と夕と三人で過ごしていた日常、それをもっともっと楽しくした平穏が欲しい。今なら、張遼とか夏侯淵とかの話もイラつかないで聞けそうな気がする。

「ふふっ」

 いつもとは全く違う笑みが零れた事に自分でも驚く。戦場だというのに心は穏やかで、思考もこれまでに無い程に冴えている。
 怪我の痛みも全く感じず、動きも格段に良い気がした。
 一つ二つと命を刈り取れば、三つ四つと彼が命を刎ねてくれる。
 まだ、まだまだ戦える。他にも欲しいモノが出来たから、欲張りなあたしはまだまだ戦える。速く夕を助けて、沢山、沢山手に入れよう。
 あたしは夕みたいに変わってしまった。欲張りでわがままになってしまった。夕とお揃いだから、それでいい。
 間違いか正解か……分からないけど、なんとなく嬉しいしめんどくさいからこのままでいいや。




 気が付けば剣戟の音はもうすぐ其処で、見慣れた顔が緩い傾斜の先にちらほらと。
 必死な表情と鈍った動き、そして圧倒的な敵の死体の山から、あいつらがどれだけ厳しい戦いをしていたか直ぐ分かる。

 これが終わったら褒めてあげよう。いつもなら当然の仕事だからと絶対にしないけど、今回ばかりは感謝も伝えよう。

 しかし……あたしを見て、彼らの表情は歓喜や安堵を浮かべると思っていたのに……絶望に堕ち込んだ。

 泣いてる奴が居た。
 震えてる奴が居た。
 悲しんでる奴が居た。
 怖がってる奴も居た。
 なのに誰も叫ばないで、自分達に来る敵を殺し続けていた。
 あたしの部下達は確かに命令に忠実だけど……戦場で感情を表に出すようには教えていないはずなのに。あたしの為の言う事には絶対遵守で、戦場ではヒトゴロシのロクデナシになるだけのバカ共のはずなのに。

――なん、で?

 幾本もの矢に貫かれて蹲る一人の兵士が円陣の中心に居た。その大きな背中は、一番強いバカのモノ。あの
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