第一章
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第一章
チップは恋
休み時間に暇なのでポーカーをしていた。これはよくある風景で別に驚くものでも何でもなかった。
しかしそれが一変したのは彼女が来たからだ。
「ちょっといいかしら」
「んっ!?何だよ」
荒木廉は同じクラスの多村麻里が来たのを見て顔を上げた。
彼女は黒い髪を肩のところで切り揃えた少し顔の丸い女の子だ。目鼻立ちはしっかりとした感じであり整っているが気の強そうな印象を与える感じだ。胸は大きくはないがスタイルは整っている。そんな女の子だ。廉といえば黒髪の横の部分を短くして上だけ伸ばしている。細い目に結構骨ばった感じの顔だ。しかしそれが精悍でもあった。
「宿題ならさっき見せたよな」
「またそれとは違う用事よ」
こう彼に言うのだった。そうしてクラスメイトとポーカーの勝負を終えたばかりの彼の側にやって来てまた言うのだった。
「丁度勝負も終わったしいいタイミングね」
「タイミング!?」
彼はそれを聞いて声の調子をあげた。
「何だよ、それって」
「だから。ポーカーよ」
麻里は言う。そのきつい顔が少しだけ綻んだ。
「ちょっと勝負したいんだけれど」
「俺と?」
「ええ、そうよ」
こう廉に対して言うのだった。
「少しいい?」
「ああ、別にいいけれどよ」
彼としても異存はない。今丁度終わったところでタイミングもよかった。しかしどうも釈然としないものもまた感じていた。それは予感めいたものであった。
「何でまた急に」
「ポーカーをするのに理由があるのかしら」
「そう言われるとな」
少なくとも今は暇潰しの遊びだ。理由を言われると返答に困る。
「ないよな、やっぱり」
「そういうことよ。ただね」
ここで麻里は言うのだった。
「賭けるものはあるわ」
「お金かい?それとも食い物かい?」
学生なのであまり大したものを賭けることはできない。しかしポーカーもギャンブルである以上賭けることがあるのは常識だった。しかし問題はそれが何かなのだ。
「食い物だったらいいけれどな」
「残念だけれどどちらでもないわ」
しかし麻里の返事はそのどちらも否定するものであった。
「じゃあ何だよ。何かくれるのかよ」
「ええ、そうなるわね」
麻里の今度の返事はこれまた廉にとっては訳のわからないものであった。
「そうなる?」
「そうよ。それでいいかしら」
「いいけれどよ。御前が何かくれるのなら」
廉は応えながら述べた。
「俺も何か賭けるか」
「あんたは何を賭けるの?」
「そうだな」
少し考えてから答えるのであった。口元に右手を当てて考えそれから述べる。
「御前が何を言いたいのか知りたくなったな」
「!?それでいいの?」
何故かその言葉を聞いて
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