第3部 始祖の祈祷書
第8章 コルベールの研究室
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からルイズは、ずるずるとウルキオラを部屋まで引っ張っていった。
ルイズは、ウルキオラを前にして、『始祖の祈祷書』を広げていた。
「とりあえず考えた詔を言ってみろ」
こほんと可愛らしく咳をして、ルイズは自分の考えた詔を詠み始めた。
「この潤しき日に、始祖の調の降臨を願いつつ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。恐れ多くも祝福の詔を詠み上げ奉る……」
それからルイズは黙ってしまった。
「続けろ」
「これから四大系統に対する感謝の辞を、詩的な言葉で韻を踏みつつ読み上げなくちゃいけないんだけど……」
「踏みつつ詠み上げろ」
ルイズは拗ねたように唇を尖らせて言った。
「なんも思いつかないの」
「なんか言ってみろ」
ルイズは困ったように、頑張って考えたらしい『詩的』な文句を呟いた。
「えっと、炎は熱いので、気をつけること」
「それは注意だ」
「うるさいわね。風が吹いたら、樽屋が儲かる」
「それはことわざだ」
まったく詩の才能がないらしいルイズはふてくされると、ぼてっとベッドに横になって、「今日はもう寝る」と呟いた。
ごそごそと例によってシーツで体を隠して着替え、ランプの明かりを消した後、椅子に座ったウルキオラを呼んだ。
「だから、ベッドで寝ていいって言ってるじゃない」
「俺に睡眠は必要ないと言っているだろう」
ルイズは頬をぷくっと膨らませた。
「いいから、ほら!」
ウルキオラは溜息を吐きながら、ベッドに横たわった。
ウルキオラが布団にベッドに寝ると、ルイズはごそごそと動いた。
何をするのかと思ったら、ウルキオラの胸に頭を乗せてきた。
「乗るな」
と呟いたら、
「枕の代わりよ」
と怒ったような、拗ねたような声が飛んでくる。
ルイズは、ウルキオラの胸に手を置いた。
軽く指が、ウルキオラの胸をなぞる。
掠れた声で、ルイズが言った。
「ねえ、元の世界に帰らなくてもいいのよね?」
「ああ」
「その…やり残したこととかないの?」
ウルキオラは少し考えた。
ないと言えば嘘になる。
「一つだけある」
「そう…そうよね」
ルイズは落ち込んだように呟いた。
暫く、二人は黙っていた。
ウルキオラは喋らないし、自分もそれ以上、何を言えばいいのか分からなくなった。
ルイズは、ぎゅっとウルキオラの胸を抱きしめた。
抱きしめて、消え入る鈴の音のように呟く。
「もう…あなたが側にいると、わたし、安心して眠れるみたい」
目の下のクマは、眠れなかった所為らしい。
そう呟くと、ウルキオラの服を掴ん
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