暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜狩人と黒の剣士〜
ランニング:剣が希望に光る時
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「見ろぃ、この有り様を!」
と言う声と共にガランガランと音を立てて、石板らしきものを投げ出された。
「この黒煉岩の砥石は三年も使える筈が、たった一年で十二も全損してしまった!」
「……いや、本当にすんません……」
誠心誠意に店主に謝罪しつつ、俺は目を剃らす。
店主スリルグはアリシアさん御用達の店であり、紹介状を携えて一年前にここにソル・スレイブ両樹の梢を携えてここに来た。
それを見たスリルグ氏は絶句し、じっくり両樹を検分してから言った。
ーーー一年くれ。一年掛ければこの枝たちはとんでもない剣に化ける。
ーーー整合騎士の帯びる神器すら越えるほどの、な。
そして一年きっかり、俺はユイリ、ユリアと共にこのスリルグ細工店を訪れた。そして、今に至るわけだ。
「そのー……剣は出来たんすかね……」
恐る恐るスリルグ氏に言うと、フンッと鼻息を鳴らして身を屈めた。
カウンター下から両手を使って取り出したのは、細長い布包みだ。
ゴトン!と如何にも重そうな音を立ててカウンターに置かれたそれから、スリルグ氏はすぐに手を離さなかった。
「若いの。そういや、まだ研ぎ代の話をしとらんかったな」
「……」
思わず無言になる俺。一応、俺には必要な物は買わない性格だったために(シア)は在るものの、細工師の料金等検討が付かない。
「……大丈夫。念のため、私達もシアは持ってきたわ」
「足りなかったら使ってほしいです」
後ろで言ってくれた二人には有難いものの、これは俺の剣なので俺が払わねば意味が無い。
「ーーータダにしといてやらんこともない」
スリルグ氏は溜めて言ったので、俺は安堵する。しかし、その後「しかし」と続いたので再び気を入れる。
「……但し、若いの。お前さんがこの化け物を振れるなら、じゃ。素材の段階でとんでもなく重かったこやつらを、南の果てからセントリアまで運んで来たんじゃから見込みは在りそうだ。……しかし、言うて置くぞ。こやつら、剣として完成した途端、また一際重くなりおった。鍛冶師や細工師は、テラリア神の加護で、どんなに上等な剣でも運ぶことだけは出来る筈が……儂とても、一メル持ち上げるのが精一杯じゃ」
「化け物ね」
俺は布包みを見下ろして言う。
……とてつもない重圧が俺を襲う。布越しでも解る。こいつが、いやこいつらがどれだけ凄いのかと言うのが。
「……うし」
大きく息を吐いて、俺は片手ずつそれを持って、カウンター上で直立させる。
剣の重さとしては、醒剣ブレイラウザー、メダジャリバー、ドラグセイバーとはほぼ同格の重さだ。
置いて布を取り、それらの全体を露にする。
ソルの方は刀身が紅く、スレイブの方は深い黒の刀身。
両方とも柄頭(ポメル)はシンプルな錘型で、握りには細く切った革が密に巻かれている。柄全体がそれぞれの樹の色を残して
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