第16話 最後の実験を
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かし他に術が無いんだから、結局言葉に頼らないといけないのが情けない。
《あぁ、ごめんよ。でも俺、拓州会に国外逃亡を頼むつもりなんだ、とは謙之介にはそもそも言ってなかったよ。もし国外逃亡するんだったら、彼らの助けが必要になる、と言っただけでね。別に国外逃亡の意思があるとは言ってなかったじゃないか。そして、話をつけるつもりだとも言ったが、国外逃亡の話を取り付けるとは言ってなかっただろ?俺はキチンと話をつけたじゃないか。交渉決裂、お前らなんてお断りです、って形でね。俺は謙之介にモノを頼むに当たっては、嘘はついてないはずだぜ?》
「うるせぇよ!このバカ……人の気持ちも知らねえでよくもまあ抜け抜けとそんな事を……だったら、俺の無事に関しては?……お前は、今回も俺の無事は保証するって、言ってたはずだ」
《え?だから、それも嘘じゃないじゃないか。今こうやって、無事に電話出来てるんだから》
「それは高田が助けてくれたからだッ!」
小倉は一際大きな声で怒鳴った。小倉の怒りとは真逆に、田中は電話の向こうで、アッハハハと笑い声を上げた。暖簾に腕押し。小倉は虚しくなって、怒るのすら馬鹿らしくなり始めていた。
《……ねぇ、まさか謙之介、あのタイミングで紫穂が助けに来たの、まさか偶然だと思ってるの?》
「……ぐ……」
小倉は言葉に詰まった。そう言えばそうだ。高田が助けに来たのは偶然であるはずがない。高田本人も昨晩、言っていたではないか。あなたには、十数人殺してでも助ける価値がある、田中の居場所を知ってるとしたらあなただけだから。そんな風な事を言っていた。つまり高田は、顔見知りがヤクザに捕まってるのをたまたま見かけたから助けてやろう、だなんて偶然ではなく、田中を追う目的のもと、必然性を持って小倉を助けたという事だ。
「……まさかお前、高田が必ず俺を助けると見越した上で、ヤクザに喧嘩を売ったなんて言い出すんじゃないだろうな」
《……公安も警察も手が回らなくなった状態で、他国諜報員と結託したヤクザに、俺に関する唯一の手がかりである謙之介が拘束されようとしているんだ。そりゃあ、紫穂が……というよりは、紫穂が所属してる組織が……見過ごすはずはないよねぇ。彼らは、国内の誰がこの件を解決したって構わないと思ってるはずだが、ただ国外に話が及ぶのだけは防ごうと考えているはずだ。当然、謙之介の確保に動くさ。他国諜報員なんかと手を組んだヤクザにお灸を据えるような、派手〜なやり方でねぇ》
小倉は脱力した。こいつにはそこまでお見通しだったのか。そうなると、自分を使者、もしくは人質として拓州会に送り込んだのも、彼らヤクザと話をする為ではなく、高田に拓州会を攻撃させる為というのが本質だったのかもしれないという気もしてくる。あの事務所でヤクザ達を煽
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