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青い春を生きる君たちへ
第16話 最後の実験を
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不可解だった。


「……貧乳なんだよなぁ」
「あまり言わないで。……ちょっとは気にするのよ、いつまで経っても幼いって……」


豊満かどうかなんて、関係が無かった。今は高田の胸の中が、この世で一番安心できる場所だった。少し拗ねたような高田の表情も、どれもこれもが皆偉大に見えた。気がついたら、震えは収まっていた。



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「あのなぁ、いつか何らかの手段で連中に釘刺すのは必要だったとはいえよ?17人も殺すこたぁ無かっただろ〜」
《……申し訳ありません》


市ヶ谷の穴ぐらの中で、ディスプレーの光と書類の山に囲まれながら古本は電話していた。ここは上戸の詰める局長室とは違って、紅茶の匂いもしなければエレガントな家具も置いてない。照明も薄暗くて、無機質でゴチャゴチャした、仕事の為の部屋だった。今も、ディスプレーやファックスが、種々の情報を垂れ流し続け、それらを整理しまとめ、分析する事に追われる、後方の戦場だった。そのオフィスの中で、古本は昨晩新たに余計な仕事を増やした輩に電話をかけていた。


「知らん事じゃあないと思うけどねえ、地元警察や報道相手の情報操作とか、ヤクザ共との折衝とか、割と大変なのよぉ?せめてやる前にやると言っといてくれりゃあなぁ、まだマシなのに」
《ご迷惑おかけしました……何分、突発的な事態が起こったもので……》
「あぁ、まぁ良いよ……事務所のガス管の老朽化による爆発事故って事にしておいたし、拓州会にも、ガサ入れを止めといてやるって事で貸し作っといたから、この件についてはもう落ち着いたわ」
《……それで本当に、連中は納得したのですか?》
「おいおい、そもそも奴ら反社会勢力なんだぜ?その本部事務所で騒ぎがあったら、ガサ入れして一網打尽に取り締まられて当たり前、他国工作員なんかとつるんでたってんなら、一人残らず治安維持法でしょっぴいて当たり前だろ?それをお咎めなしってんだから、泣いて喜ぶべきなんだぜ?それに、仕返しするにしても、誰に仕返しするんだ?俺たちにするってのか?たかがヤクザ風情がねえ?今度は17人じゃきかなくなりそうだなァ」
《…………》


古本としては、それも面白そうだな、とさえ感じる。昨日の大活劇の報告を受けた時は、自分も血が滾ったものだ。現実的には、しょうもないヤクザの掃討なんて何のメリットも無いし、人員を割く価値もないのだが、だからこそ、今は後方に回されている自分の暇潰しとして使えるかもしれない……
そこまで考えて、古本はすっかり"やる気"になっている自分に苦笑した。電話の向こうのあいつも呆れてるだろう。出会った時から、風俗通いに喫煙にパチンコにと、あいつには呆れられっぱなしである。


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