第五章
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第五章
「背は低いし」
「胸ないし」
「色気は全然ないし」
「性格は物凄くいいし」
彼等の話は何一つ聞いてはいない。今度はこんなことを言うのだった。
「素直で親切で気が聞いて。あんな性格のいい娘いないよね」
「まあ性格はな」
「確かに」
「そうはいないし」
「滅多に」
性格については誰もが認めた。それは確かだった。
「声だっていいし」
「そうよね。高い声で」
「澄んでて」
「アニメ声だよな」
それが理佐の声なのだった。これも間違いなかった。
「いや、あの声も好きなんだよ」
「声もか」
「ついでに今好きってはっきり言ったし」
「自覚ないみたいだけれど」
まさにビール故だった。ビールが彼を自爆から自爆へと駆り立てていた。しかも本人にそれを気付かせないままに。どうやら彼はビールを飲むとそうなるらしい。
「自白剤になってるよな」
「そうよね」
「こいつにはこんな効果があるんだな」
「意外っていうか」
彼等は今更ながらこの展開に驚いていた。しかし驚くのはこれだけではなかった。そして呆れもするのだった。
「それでさ」
「それでだ?」
「まだ何かあるの?」
「天使だよね」
今度はこんなことを言い出してきたのだ。
「もうね。あれは」
「天使って」
「そこまで言うか」
「女神だよ」
完全にのろけている顔だった。もう聞いている方が恥ずかしい程惚れ込んでいるのは明らかだった。そこまで至っているのであった。
「そうだね。この世で一番の美女だね」
「この世で一番」
「何処までいくんだ?こいつ」
「何処のラブコメよ」
まさにそんな有様だった。そして彼は遂に自分から言い出したのだった。今度はこんなことを言い出してきたのである。最早誰にも止められなかった。
「あれだよね」
「あれ?」
「平均点にして」
「平均点か」
「今度はそれなのね」
「九十八・五はいってるね」
この点数を出したのだった。
「百点満点でね」
「おい、そりゃ滅茶苦茶高いじゃないか」
「マッカーサーの平均得点より高いぞ」
マッカーサーは陸軍士官学校はじまって以来、そしてそれ以降もいなかった程の秀才だった。彼の母がウエストポイントの向かい側にあるホテルに泊まり込み息子の部屋を見張っていていつも最後まで勉強しているのか灯りをつけて監視していたのである。
そしてさらにだった。毎日共に散歩して学業について厳しく聞いていたのだ。彼は同じ軍人だった父親の影響が強い人物だったが母親の影響も強かったのだ。
その彼の士官学校での平均点は九十七・八だった。丈が理佐について言った彼女の平均点はそれよりもまだ高かったのである。
「殆ど満点じゃねえか」
「何でそんなに高いのよ」
「っていうか何で満点じゃないん
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