Interview11 1000年待った語り部 V
「案外しんどいんだな」
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りを打った。
思い出すのは、レイアがガイアスにした「お願い」。
“わたし、新聞記者やってるんだけど、ガイアスのこと、記事にしてもいい?”
“記事にするのは、ガイアスの仕事が終わってからにするから”
“待つよ。何年でも”
“ありがとう! きっとすっごいスクープになるよ”
“まずはわたしが大人にならなきゃ”
(レイアは凄いな。王様が相手でもブレない。しかもあんなに嬉しそうに記事にされるんじゃ、相手もイヤな気分になれないよな)
レイアは記者として一日一日成長している。それに比べて――と、陰鬱とする。想うのだ。俺は何をしてるんだろう、と。
ルドガーは真鍮の懐中時計を取り出し、かざす。
世界を壊す仕事。可能性の枝、ありえたIFを伐って捨てる仕事。少なくとも人様に胸を張って言える仕事ではない(そもそも守秘義務があるので言う宛てもないが)。
だが今のルドガーにはエージェントとしての仕事がライフラインなのだ。多額の借金を返済するため、兄の庇護を失くした自分が働いて生活の糧を得るために、分史対策エージェントの法外な給与は必要不可欠だ。
(甲斐性なしの男一人の生活のために壊される世界は堪ったもんじゃないな)
懐中時計を握った手の甲で目元を覆い、自嘲した。
ぴんぽーん
牧歌的な音が思案を断ち切ってくれた。
ルドガーはベッドから起き上がり、リビングに出て玄関ドアを開けた。
「レイア」
「やっほー。調子、どう?」
「ちょっと疲れてるけど、悪いとこはないよ。上がるか?」
「うん。おじゃましまーす」
レイアはリビングに入るなり、テーブル備え付けのイスの一つに座った。1年もこの部屋に通っているレイアにとっては、そこが指定席なのだ。
ルドガーはレイアの正面に座った。
「顔色悪いよ? もしかして休んでるの邪魔しちゃった?」
ここで「なんともない」と優しくごまかすか、胸にある気持ちをぶちまけてしまうか。ルドガーの疲れた頭は、後者を選んだ。
「本音言うと、何で俺が、って気持ちがあるんだ」
「何で、って?」
「知らない子にいきなり痴漢の濡れ衣着せられて、テロに巻き込まれて、仕事なくして、借金背負って。それだけでもキツイのに、その上、自分でもよく分からない力で世界壊せとかさ。肝心のユリウスは何も教えてくれないし。エージェントになれたのは嬉しいけど、社長が本当に欲しかったのは『鍵』の力だった。俺、ほんの何週間か前までは、本当にどこにでもいる平々凡々な男だったんだぜ? 世界の危機とか縁遠い、モブキャラっていうか、背景の一部っていうか」
ルドガーは前髪を掻き揚げ、苦し紛れに自嘲した。
「日常がなくなるって、案
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