Memo1 ヴァイオレット・ハニー
「だって俺たち、兄弟じゃんか」
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赤ん坊の頃から、これを歌ってやるとすぐ機嫌が直った。子供の頃、二人で山にキャンプに行った時もそうだった。雷が鳴って怖がってたくせに、これを歌うと、お前は泣きたいのを我慢して歩き続けた」
ルドガーは密かに拳を固めた。――これ以上をユリウスに語らせたくない。
「違うだろ」
ユリウスが訝しげにルドガーを見返した。
「俺がユリウスと暮らし始めたのは5歳の頃。赤ん坊の俺なんて、ユリウスは知らないはずだ。キャンプだって、ずっとエージェントの仕事で忙しくしてたユリウスが行けるわけない。ユリウス、休みの日は一日家で寝てるくらい疲れてたろ」
ユリウスの顔が、今まで見たこともないほど蒼白に染まった。
それを嗤って、ではないだろうが、イリスがくすくすと小さな笑い声を上げた。
「言ったでしょう? ルドガーは賢い子だって」
「貴女の入れ知恵か」
「いいえ。イリスも初めて聞く話ばかりよ。ルドガーはこれまでで貴方に聞きたいことがたくさん出来たみたいね。お兄さんなら、弟の疑問にはちゃんと答えてあげなさい」
イリスがルドガーを見て微笑んだ。大丈夫、わたしが付いていてあげる、と言われた気がした。
「ヴェルから聞いた。俺の母さんとユリウスの母さんが違う人だってこと。俺のほうの母さんは、とっくの昔に死んでたってこと。聞いてから、全部繋がった」
ルドガーは大きく息を吸って、吐いた。
「知ってた」
「ルドガー……?」
「俺、知ってたよ。母さんが死んだ時にユリウスがそこにいたのも、ユリウスにその気がなかったとしても、結果的にユリウスが母さんを死なせたんだってことも」
ユリウスはかつてないほど愕然とした。
知っていた、と。ユリウスの犯した罪を知っていたと。目の前の異母弟は呆気ないほどさらっとそう言ったのだ。
「お、前、いつ」
「最初からに決まってんだろ。俺、その場にいたんだぜ? ガキの記憶力なめんなよ」
「それもそう、か……いやっ、待て。それならお前、俺がクラウディアを――自分の母親を殺したと知って、俺と暮らしてきたのか!? 何も知らないフリをして!?」
「別に知らないフリなんてしてない。聞かれなかったから言わなかっただけ。いや、子供心に言わないほうがいいんだろーなー、とは思ってたけどさ。あの頃のユリウス、結構荒れてたし」
「どう、して」
ならばどうしてルドガーはユリウスに笑いかけることができるのか。どうして暖かい料理を作ることができるのか。どうして、憎まずにいられたのか。
「だって俺たち、兄弟じゃんかっ」
ルドガーは満面の笑みを浮かべ、翠眼から涙を流した。
「あ、れ? 何で……俺、泣いて? あれ、ど、して」
堪らなか
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