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アバタもエクボ
第四章

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第四章

「ねえ、それで」
「それで?」
「聞きたいことがあるんだけれど」
 彼の顔が真っ赤になり相当酔ったと見た時に声をかけるのだった。
「ちょっとね」
「ちょっと?」
「ええ。あんたいつもうちのクラス来るじゃない」
「そうよね」
「そうだよな」
 皆わかっていたがここでも芝居をするのだった。
「それ何でなのよ」
「何かあるのか」
「い、いや別に」
 それを言われた彼は急に狼狽しだした。普段ならばここまで狼狽はしないだろうが今の彼はかなり酔っていた。それでかなり慌てていた。
「何もないけれどな」
「そうか。だったら」
「理佐のことどう思うの?」
 それをいきなり聞いてみせたのだった。
「理佐のこと」
「どうなんだよ、それは」
「えっ、姫のこと!?」
 そしてだった。彼はやってしまった。
「姫がどうしたって?」
「えっ、姫!?」
「姫って」
 皆それを聞いて目をしばたかせた。
「まさか理佐のこと」
「自分ではそう呼んでたのかよ」
「それはまあ」
 丈は目を完全に泳がせていた。酒がその狼狽をさらに際立たせた。
「あれだけれど」
「あれ!?」
「あれって!?」
「まあさ。鳴宮さんってさ」
 ここで言う彼だった。
「可愛いよね」
「俺達何も言ってないよな」
「そうよね」
 皆流石にその展開は読んでいなかった。目をしばたかせる。
「それで自分から言うか」
「ビールの効果みたいね」
「確かにな」
 その為にビールを飲ませたのは事実だ。しかしそれでまさかここまで言うとは思わなかったのだ。予想を上回る効果を発揮していた。
「そのせいなのか」
「これって」
「予想外」
「顔はもう松浦亜弥も北乃きいも超えてるし」
「そこまで言うか!?」
「あややとかきいちゃん以上って」
 皆そのことに唖然とさえなっていた。
「何ていうか」
「そこまで好きなんだ」
「いや、好きとかそういうのじゃなくてさ」
 これは口では否定はした。とはいっても誰もそれを信じてはいない。もうその泳いでいる目とうろたえている表情が何よりも雄弁に物語っていた。
「奇麗じゃない、とても」
「まあ可愛い娘だけれど」
「確かに」
 女の子達がそれに頷く。それは否定できなかった。
「それはね」
「その通りだけれど」
「あんな奇麗な娘この世にいないよ」
 丈の破天荒なのろけは続く。
「いや、あんな奇麗な娘いたんだね」
「何がここまでこいつをのろけさせたんだ」
「理佐って確かに可愛いけれど」
「それでもね」
 皆はここで彼女のことを考えるのだった。そののろけの対象をだ。

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