第三章
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第三章
「それ聞きたいんだけれど」
「聞くまでもないじゃない」
「ねえ」
「もろばれだし」
「誰がどう見ても」
「それこそ学校の皆が知ってることだし」
だれてないと思っているのはまさに丈本人だけであるのだ。
「聞くまでもないじゃない」
「それは」
「まあそれでもよ」
ここで彼女はその理佐を見る。彼女は何も知らないふりをしている。あえて相手のことは何も知らないふりをしているのだった。周りもそれに合わせている。
「聞いてみたいのよ」
「どうして理佐が好きか?」
「そういうことを?」
「聞いてみない?」
「って聞くの」
「どうやってよ」
周りはそのことを彼女に問うた。
「一体どうやってよ」
「流石に聞くの難しいでしょ」
「そうよね」
皆で言い合う。すると彼女はここでまた言った。
「方法はあるわ」
「方法あるの」
「それも」
「そうよ。押して駄目なら引いてみろよ」
笑って述べる彼女だった。そうして考えた作戦は。
まずはその丈に声をかけるのだった。場所は校門、時間は放課後。家に帰ろうとする彼にクラスの有志達を募って声をかけたのである。
「ねえ、ちょっといいかしら」
「いいか、恩田」
「えっ、俺?」
丈は彼等に声をかけられて思わず顔をそちらに向けたのだった。
「俺に何か用か」
「あるから声をかけたんだよ」
「ちょっとな」
「ちょっとかよ」
「俺の家に来いよ」
「悪いようにしないから」
男のメンバーの一人が彼にこう言ってきた。女の子達も言う。丈はそれを聞いてまずはこんなことを言うのだった。
「総括でもしようってのか?」
「何で御前を総括するんだよ」
「そんなことはないから」
それは笑って否定する彼等だった。
「飲もうぜ、それで誘ったんだよ」
「ビールあるわよ」
「えっ、ビールって!?」
それを聞いた丈の目の色が変わった。
「ビールあるの?」
「ああ、それも黒ビールな」
「ソーセージもあるわよ」
「あとジャーマンポテト」
皆笑顔で彼に話す。実は彼の好きなものを事前に調べておいたのだ。それであえてそれで釣ったのである。これが引いてみるということだ。
そしてその作戦はだ。成功した。
「よし、じゃあ喜んで」
「ああ。じゃあ飲もうぜ」
「楽しくやりましょう」
「実はな」
ここで彼等は心にもないことを言うのだった。
「前から御前と飲みたかったんだよ」
「心おきなくね」
「そうだったのか」
何も知らない彼はそれを聞いて素直に喜んだ。
「俺と」
「そうなんだよ。だから」
「皆で騒がしくね」
こうして丈をその家に入れた。そうして実際に黒ビールを飲みソーセージやジャーマンポテトを食べる。彼にどんどん黒ビールを飲ませるのだった。
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