第二章
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第二章
目は細めで何かわらっている感じである。顎の右のところに薄いほくろがある。
その彼が何気なく来たのだった。皆それを気付いていないふりをしてまずは目で迎えた。
「来た来た来た来た」
「朝の御来訪」
「恩田丈君は今日も来ました」
皆彼を見ながら笑っている。しかし気付いていないふりは続ける。その彼恩田丈はそのにこにことした顔で教室に入って来てだ。まずはそのクラスの左奥の彼女を見るのだった。
「おはよう、皆」
「おはようって御前さ」
「クラス違うわよ」
皆はここではわざと気付いていないふりをして冷たい言葉をかける。
「御前六組だろうが」
「ここ三組よ」
クラスは校舎の左から右に一組から並んで六組まである。つまり普通は間違えない場所にあるのだ。
「全然違うぞ」
「クラスが」
「あれっ、間違えたんだ」
丈はそれを指摘されてわざとらしく返した。皆それを見て内心呆れ果てて呟く。
「幾ら何でも毎日間違えるかよ」
「そんな訳あるか」
「しかも目はずっと」
見れば彼の目は彼女に釘付けだ。覗き込みさえしている。
それから上から下まで嘗め回す様にして見ている。一歩間違えれば完全に変質者である。そんな今の彼だった。わざとらしいどころではない。
「鳴宮さんに釘付けで」
「どこをどう間違えろってんだよ」
「丸わかりだっての」
しかしこうは言っても相手をするのだった。気付いていないふりをして。
「自分のクラス行けよ」
「皆待ってるからな」
「ああ、そうだね」
丈はずっとその彼女鳴宮理佐を見ながら応える。
「悪いね、間違えて」
「間違えてないだろ」
「わざとだろ」
「もうわかってんだよ」
こうは思ってもだった。やはり本人には言わない。そうして応対するのだった。
「ほら、わかったからな」
「早く行けよ」
「今度は間違えるなよ」
「うん、それじゃあ」
こうして三組を後にする丈だった。出るまでもずっと理佐を見ている。皆彼を見送ってからそのうえで呆れたように、やれやれとした顔で言うのであった。
「全く。毎朝毎朝」
「わざとらしいっていうか丸わかりっていうか」
「恒例行事ね」
苦笑いさえそこには出ていた。
「あれで誰も気付いてないってね」
「どうしたものかしら」
「まず朝に来て」
最初はそれなのであった。
「それから暇があればうちのクラスに来るし」
「ああだこうだって理由つけて」
「なくても来るし」
「通り過ぎたりしてね、わざわざ教室の中を」
そこまでしているのである。
「何ていうか。わかりやすいっていうか」
「そりゃわかるって、誰も」
「わからない筈ないわよ」
女の子達もだった。ここで誰かが言った。
「まあ本人の気持ちはわかってるけれど」
「
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