第一章
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第一章
アバタもエクボ
「どうなんだろうな」
「どうなんだろうなって?」
「だからあいつだよ」
クラスの面々がある人物を指差して話をしていた。
「今日も来てるからな」
「休み時間になったら絶対に来るよな」
「用もないのにな」
「いや、用はあるんだろ」
こういう言葉も出て来ていた。
「あいつにとってはな」
「あいつにはか」
「だからあるんだよ」
こう言うのであった。
「あいつにとっては」
「あの娘見ることだけだろ?結局は」
「まあそうだけれどな」
どうやら彼等もその事情は察しているらしい。言葉にもそれは出ている。
「それでもあることにはあるんだよ」
「あいつにとってはか」
「しかもな」
ここで言葉に呆れたものが入る。
「あいつ誰にもばれてないと思ってるのかね」
「思ってるだろ、やっぱり」
「馬鹿か?あいつ」
言葉に入っている呆れたものはさらに強いものになった。
「あんなの誰でもわかるぞ」
「もうクラスの皆わかってるぞ」
「向こうのクラスもな」
その彼のクラスもらしい。この話によるとだ。
「わかってない方がおかしいしな」
「それにな」
「ああ、先生達だってな」
話は生徒に留まらないのだった。
「あいつはあの娘のことが好きなのかってな」
「この前職員室で話してたしな」
「しかも先生達皆笑顔でな」
そこまで公になっているというのである。これはある意味かなり凄いことである。
「言ってたしな」
「それにな」
話はさらに続く。呆れている度合いを深めてである。
「彼女本人もわかってるよな」
「わかってない筈ないだろ」
「だよな。誰にもわかるよ」
「わかってないのは本人だけだよ」
その彼だけだというのである。
「誰にも気付いてないってな」
「やれやれ、何でかな」
「何で気付かないんだ?」
呆れ果てながら話をしていくのだった。
「俺達が気付いてないって思えるんだ?」
「全く」
「ああ、そろそろだな」
ここでまた言うのだった。
「来るな、また」
「ああ、そんな時間か」
「まず朝の来訪だ」
それだというのである。
「来るな、また」
「それで何もないふりをしてな」
「用もないのに来て」
「やたらきょろきょろしてな」
随分とぼろくそ言っている。言葉には何の情け容赦もない。
「理佐ちゃんもう来てるしな」
「自分の席にいるしな」
彼等はここで教室の左奥の方を見る。そこに一人の垂れ目で黒い髪を少し波立たせて伸ばしている女の子がいた。白くて可愛らしい顔をしている。小柄な身体にブレザーの服がやけに似合っている。座っている椅子からグレーのチェックのスカートが見え奇麗な生足も見える。
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