暁 〜小説投稿サイト〜
【短編集】現実だってファンタジー
俺馴? バレンタイン特別編
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
だ。

なのに先に起きていて、しかも問題なのがこちらをもあっているという事。あの自分勝手で人を迷惑扱いするのもやぶさかじゃないミスター意地っ張りが、態々こちらを待って大人しくしているというのもおかしい。普段の彼ならとっくにひとりで学校に向かっている筈である。

「はっ……!?まさか私のチョコ欲しさに待機中!?」

彼と共に迎えたバレンタインは今年が初めてである。故にこちらの予想以上にバレンタインを楽しみにしていたさざめはきっといりこからは貰えるだろうと心躍っているのかもしれない。
……ちなみに周囲がこの話を聞いたら迷いなく「さざめに限ってそれはないわー」と言うだろうが、事実上の徹夜状態であるいりこは妄想力やテンションが変な方向に暴発していた。

「こうしちゃいられない!待っててさざめくん……アナタのいりこがすぐ行くよーーッ!!」

瞬間、いりこは何を思ったか神秘術でも最高位の難度を誇る「限定時間操作数列」を発動させ、僅か数秒の時間を体感1分にまで引き延ばして食事歯磨き等を目にも止まらぬ早さで終了させ、鞄を持ってリビングを飛び出していった。

「え、ちょっと早い!?」
「おい入子、忘れ物はしてないかー!?……って、もう行っちゃったよ」

一般人の両親にはいりこがテレビにおける早送りに匹敵する速度で動いていたため殆ど動きをとらえきれず、ただただ呆然とするばかり。前々からさざめの事を好いているのは知っていたが、ここまでいくと色々と不安になるのであった。



玄関を飛び出した先にいるのは、割と一方的ながら最愛の少年――さざめ。
いりこは満面の笑みで飛び出す。

「おっはよぅさざめくん!!」
「来たか……ふあぁ」

玄関で待っていたさざめは軽く欠伸をする。
お待たせしました!と言わんばかりに、いりこはさっき時間操作中に回収した己のチョコ入りの箱を取り出した。(いりこの妄想の中では)さざめが待ちに待った、女の子からの本命チョコである。渡すために自力で包装もしているそれは店の物にも劣らない。これで好意に気付かない男もいなければ落ちない男もいない筈。
そして、実はこのチョコには特別な薬を……えっと、ちゃんと上の人に最低限の使用と言う許可を貰って……盛っているのだ。長らくさざめと恋人関係に到れなかった無念を晴らすために今回ばかりはかなり本気だ。

さあ、勇気を出してそれを出すのよいりこ。術では駄目でも薬なら効くはず。効いてしまえば後はこちらのもの!と若干危ない事を考えながら、いりこはそれをさざめに突き出した。

「ハッピィバレンタイン!だよっ!」
「ほれ、ハッピーバレンタイン」
「……へ?」

自分が突き出したチョコの更に上を、さざめの腕が通り越していた。遅れて、鼻腔にお菓子ではなく花の微かな甘い香りが
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ