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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴? バレンタイン特別編
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「おや、知らないのかい?」

聞き覚えのない言葉だ。響きや状況から察するに、バレンタインに花をプレゼントすると言う事だろうか。俺の疑問に店員さんは親切に答えてくれた。

「日本じゃバレンタインは女の子のイベントだけど、海外では性別関係なしだって聞くよ。花束やカードが主流なんだったかな?それで、日本でもフラワーバレンタインを広めようって動きがあるんだ」
「はぁ、なるほど……でもその割にはこの店は宣伝してないみたいですけど?」
「なに、そういうのは気の利いた人間だけ買いに来ればいいのさ。……君みたいなね?」
「うっ」

話せば話すほどに得体の知れない罪悪感が増幅してくる。向こうは入院中の女の子を喜ばせようと俺が花を買いに来たように思っているのだと考えると、自分の本来の目的とかけ離れすぎていて情けない気分になってくる。
なんだかこのままだと嘘をついているようでばつが悪かった俺は、苦し紛れに訂正することにした。

「あの……」
「ん?どうしたんだい?……あ、花の種類ならカーネーションなんかがお勧めだよ。オレンジのカーネーションは愛を伝える花言葉だし、きっとその子も喜ぶと思うし」
「あー……お見舞いって言うのはその、病院に行こうって話じゃなくてですね……」
「?」

首を傾げる店員に何といおうかと悩み、取り敢えずぱっと思いついたのは――

「母さんとかにプレゼントしようって意味で……何というか、たまにはこっちからと勢いをね」
「あ……ああ、そうなのかい?これはちょっと早とちりだったなぁ。や、君のお母さんが女の子と言えないとかそう言う話じゃなくてだね?」
「ははは、紛らわしくてスンマセン……」
「いやいやそんなことはないよ。最近の若い人は花なんてほとんど買わないからね。さて、親に贈るなら母の日で定番の赤いカーネーションもあるけど、バラもいいな」

まぁ、ここいらが落としどころだろう。少々財布が寂しくなるかもしれないが、たまの親孝行だと考えれば悪くない。そう開き直った俺は、不意に気になる花を見つけた。特に深い意図があった訳ではなく、ただその花言葉に惹かれていた。

「店員さん、この花包んでもらっていいですか?」

その花言葉が俺の内心を言い表しているような気がして、俺はそれを買うことに決めた。



 = =



一方その頃いりこは、部屋に籠って唸っていた。

「古代日本のヴァレンタインって絶対に変だよね……」

いりこはパラレルワールドにおいて未来の地球に移民してきた異星人である。そしてあちら側の地球はとある事情で文化の大半がデータロストしている。だが、文化の名残は未だに残っている物がある。バレンタインも、日にちと名前はまだ残っていた。
実は彼女の親が住んでいた元来の母星は、ある理由か
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