第一話〜prologue
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ぁ」
「…うん、確かにカラキリグモの体液だな。報酬は」
「あー、いいよいいよ♪お金とかあってもしょうがないし。その代わり…」
そう言うとハナは再びメニューウィンドウを開き、今度は大量のフリルがあしらわれたメイド服を取り出し、カリンの前に掲げる。
「是非とも!カリンちゃんにこれを着てもらいたいんだけど」
「絶対に嫌。はいこれ報酬金」
「…少しは考えてくれても」
「ハナ、お前、俺がそういうの苦手なの知ってるよな?」
「でもでも!カリンちゃん折角可愛いのにいつも可愛くない服着てばっかだし!」
「うっさい、大きなお世話だ」
カリンは溜め息を吐きながら改めて自分の身体を見下ろす。
細い手足、控え目ではあるものの確かな存在感を持つ胸。
カラキリグモの体液が入ったビンに映る顔は少年のようにも見えるが、身体的特徴が加わることで一見して完全に女性プレイヤーである。
しかし、カリンこと柏木倫人(かしわぎ みちひと)は男である。
この場合の男というのは男性アバターという意味ではなく、男性プレイヤーという意味である。
自分のアバターを物憂げに眺め続けているカリンにハナは首を傾ける。
コン、コココ、コン、コン
そんな時、再び”仕事”のノックが部屋に鳴り響く。
イレギュラー要素が目の前にある以上、今度の来訪者はおそらく本当に”仕事”の依頼に来たのであろう。
カリンはハナに目配せすると扉をゆっくりと開ける。
「どちら様でしょう?」
「…リコルの実を売りに」
合い言葉からギルドのポニポニの紹介である事を確認すると扉を開ききって依頼人を部屋に招く。
その依頼人は小太りした男で瞳からは欠片も生気が感じられず、奥深くに揺らめくような憎悪が見え隠れする。
(これは冷やかしではなさそうだ)
カリンは椅子代わりにベッドに座り、扉が閉まりきるのを確認すると同時に尋ねる。
「それで、ご用件は?」
「殺して欲しい奴がいるんだ」
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