第一話〜prologue
[2/3]
[1]次 [9]前 最後 最初
被り静かに扉を引く。
最大値まで修練済みの索敵スキルにより来訪者が一人である事は予め分かっていたが、警戒しておくに越した事はない。
なぜなら…
パーン!!パーン!!
扉を拳二つ分程開けると同時にけたたましい破裂音がなり響き、色とりどりの紙が扉の隙間から部屋に入ってくる。
「やっほーカリンちゃん!ハレルヤー!…ってなんで私の粋なサプライズにノーリアクションなの?」
「…今何時だと思ってるんだ?」
呆れながらも扉を開ききり、来訪者を部屋に迎え入れる。
この来訪者ことハナはカリンが所属するギルドの一員であり、SAOでは珍しい女性プレイヤーでもある。
SAOがデスゲームと化したあの日、全プレイヤーのアバターは初期設定に用いた体型データや、ナーヴギアがスキャンした顔の表面の凹凸を基に現実世界のものに置き換えられ、それによりネットで異性を演じる”ネカマ”と呼ばれるプレイヤー達は強制的に本来の性別、姿でプレイする事となった。
そういった経緯により、現在このSAOでは一般的なネットゲームに比べて圧倒的に男性キャラクターの比率が高くなっている。
ハナはそういった稀少な女性プレイヤーではあるのだが、その奇抜さや空気を読まない言動から男性プレイヤーだけでなく同じ女性プレイヤーにも敬遠されている。
具体的に、ソードスキル使用後に仲間と立ち位置を入れ替えることで技後硬直の隙をカバーする”スイッチ”という技術があり、これは複数人で協力してモンスターと戦うときには必須とされているが、ハナはスイッチのタイミングで何故か戦線から離脱して道端で植物を採集しているなど、SAOにおいてはパーティーメンバーの死亡事故に繋がる可能性のある行動を何ら躊躇いなく行う。
実際に何も知らずに「可愛い女の子」であるハナとパーティーを組んで命を落としそうになったプレイヤーは数多く、今では“無意識オレンジプレイヤー”などと呼ばれ、余程の世間知らずでなければ話しかける事もない。
「ごめんごめん、30層の路地裏にあった露店で面白いもの見つけたから見せてあげようと思って♪」
「…それが今のクラッカーか?」
「うん♪これはもう、一目見た瞬間に『カリンちゃんをビックリさせるしかない!』って閃いてさ!」
「…あー、そうかい。んで?仕事の話は?」
「あー、ごめん、さっきのはカリンちゃんの不意を突こうとしたジョークで…」
「今すぐ出ていけ」
「ごめんごめんごめん!あ、そう言えば、カリンちゃんが探してた物が手に入ったから持ってきたの!そうそう、そのために来たんだった!」
「『そう言えば』って言ってる時点で全く信用出来ないが…」
ハナは慌ただしくメニューウィンドウを開き、ストレージを漁ると紫色の液体が入ったビンを取り出す。
「ほら!あったあった!…あって良かった
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ