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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第百六幕 「大逆転への下準備」
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にも存在することが判明した。
件の28も、現在は全く任務規定にない行動を行っている。
組織の、システムの、アニマスの秩序を乱す行為は排除されなければならない。
アニマスに個性は必要ない。アニマスに自由は必要ない。アニマスに不良品は必要ない。
それこそが組織の為に必要な秩序である。

だが――鈔果の言葉が松乃の論理的思考を乱す。

「28番は、自分が助けに行けないからお前の危機をアタシに知らせてくれたんだと思うぜ?」
「でも、私は救援なんて求めて無かったんだよ?指示だって下ってなかった」
「下ってねーから自己判断したんだろ?」
「そんな……」
「ダチ思いでいい奴だと思うけどなー、アタシはさ」

そう言って爪楊枝に刺さったスイカをしゃくっと噛んだ鈔果は、もう一本の爪楊枝をつまんでカットスイカを松乃の口に突き付けた。反射的にそれを受け取って食べる。
歯によって繊維が潰され、隙間にたっぷりと入っていたスイカの果汁が口いっぱいに広がる。程よく冷えたそれは、機材の熱に晒されていた松乃の口内を程よく冷やした。

「……おいしぃ」
「だろ?……指示とか要求とかムズイこと言ってるけどさ。今のスイカだってアタシは誰かに命令されて松乃に渡したわけじゃねーし。食べておいしかったから、松乃にも食べてほしくなっただけだし。28番がそういう行動をしたのは、それと大差ない事だとアタシは思うぜ」
「それは人間特有の感情的な行動だよ」
「はぁ?何言ってんだ、お前も人間じゃんか?」
「………そう、だね。ゴメン、変な事言った」

変なの、とカラカラ笑う鈔果に、松乃は自身では解析不能の感情を抱いた。

彼女は恐らく、私が『まっとうな人間ではない』事には未だに気付いていない。
いや、ひょっとしたらそれさえも見切った上で、それでもお前は人間だと言っているのかもしれない。

だとしたら――彼女にそう言われるたびに胸の奥に渦巻く、きつい締め付けのようなものは何なのだろう。人間的な、余りにも人間的なこの痛みは。
感情や個性が必要ない筈のこの身体に感じる未知の痛みは。

(アニマス28……貴方もそうなの?貴方も、この胸の痛みを感じているの?)

機材の一つに映る彼女の現在地座標を無意識に目で追いながら、松乃は急激に彼女に会って話をしたくなっていた。
 
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