第3部 始祖の祈祷書
第7章 竜の羽衣
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ウルキオラは目を丸くして、『竜の羽衣』を見つめていた。
ここはシエスタの故郷、タルブの村の近くに建てられた寺院である。
そこにこの『竜の羽衣』は安置されていた。
というか、『竜の羽衣』を包み込むように、寺院が建てられた、と言った方が正しい。
シエスタの曽祖父が建てたというその寺院の形は、ウルキオラの記憶にあった。
寺院は、草原の片隅に建てられていた。
丸太が組み合わされた門の形。
石の代わりに、板と漆喰で作られた壁。
木の柱……。
白い紙と、縄で作られた紐飾り……。
そして、板敷きの床の上に、くすんだ濃緑の塗装を施された『竜の羽衣』は鎮座していた。
固定化のおかげか……、どこにも錆びは見られない。
作られたそのままの姿をしている。
「バカな…」
ウルキオラは目を見開いたまま、『竜の羽衣』を見つめ、ゆっくり近づいた。
そんなウルキオラの姿に、皆は驚いていた。
「ウルキオラさん、どうしたんですか?わたし、何か不味いものを見せてしまったんじゃ……」
ウルキオラは答えない。
ただ、呆けて『竜の羽衣』を見つめるばかり。
そんな状況なので皆と呆然としている。
「ウルキオラさん、ほんとに……大丈夫?」
心配そうにウルキオラの顔を覗き込むシエスタに近づいて、ウルキオラは熱っぽい口調で言った。
「シエスタ」
「は、はい?」
シエスタら頬を染めて、ウルキオラの目を見つめ直した。
「なに、なんなの?急にどうしたのよ?ウルキオラ!」
キュルケはウルキオラの背中に向かって大声で叫んだ。
ギーシュとタバサは興味津々と言った風に、『竜の羽衣』を見つめている。
「お前の曽祖父が残したものは、他にないか?」
「えっと……、あとは大したものは……、お墓と、遺品が少しですけど」
「見せてくれ」
シエスタの曽祖父のお墓は、村の共同墓地の一画にあった。
白い石でできた、幅広の墓石の中、一個だけ違う形のお墓があった。
黒い石で作られたその墓石は、他の墓石と趣を異にしている。
墓石には、墓碑銘が刻まれている。
「見たことない文字ね?タバサわかる?」
キュルケは墓碑銘を覗き込み、タバサに振り返る。
タバサも分からず、首を振る。
「ひいおじいちゃんが、死ぬ前に自分で作った墓石だそうです。異国の文字で書いてあるので、誰も銘が読めなくって。なんて書いてあるんでしょうね」
シエスタが呟いた。
「ふむ、確かに見たことない文字だな」
ギーシュも深々と墓碑銘を見つめた。
しかし、そんな中、ウルキオラだけがその文字を読み上げることができた。
「海軍少尉佐々
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ