第3部 始祖の祈祷書
第7章 竜の羽衣
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いおじいちゃんは、どこの国の人だったんでしょうね」
ウルキオラは呟いた。
「俺の世界の人間の国だ」
「ほんとですか?なるほど、だからお墓の文字が読めたんですね。うわあ、なんか感激です。私のひいおじいちゃんと、ウルキオラさんが同じ世界の人だなんて。なんだか、運命を感じます」
シエスタはうっとりした顔で、そう言った。
「じゃあ、ほんとに。ひいおじいちゃんは、竜の羽衣でタルブの村へやって来たんですね……」
「これは竜の羽衣という名前じゃない」
「じゃあ、ウルキオラさんの世界では、なんて言うんですか?」
『竜の羽衣』と呼ばれるその姿を見つめながら、ウルキオラは昔の人間の争いを思い出した。
どうしてそんな名前で呼ばれたのか。
おそらく、そんな名前で呼んだ方が通りが良かったのだろう。
『破壊の剣』とそうだった。
翼と胴体に描かれた、赤い丸の国籍標識を見つめた。
もとは白い縁取りがなされていたらしいが、その部分が機体の塗料と同じ、濃緑に塗り潰されている。
そして、黒いつや消しのカウリングに白抜きで書かれた『辰』の文字。
部隊のパーソナルマークだろう。
全てが懐かしい。
何十年も前に見た、現世の記憶。
戦闘兵器。
天翔る翼。
『竜の羽衣』。
ウルキオラは言った。
「零式艦上戦闘機五二型。またの名をゼロ戦」
「せんとうき?ぜろせん?」
「ようするに、空を飛び、戦うモノだ」
「これが…飛んで、戦う?」
シエスタは『竜の羽衣』、『ゼロ戦』を見つめた。
ウルキオラは頷いた。
その日、ウルキオラたちは、シエスタの生家に泊まることになった。
貴族の客をお泊めすると言うので、村長までが挨拶に来る騒ぎとなった。
ウルキオラはシエスタの家族に紹介された。
父母に兄弟姉妹たち。
シエスタは、八人兄弟の長女だった。
父母は怪訝な顔でウルキオラを見たが、私が奉公先でお世話になっている人よ、とシエスタが紹介すると、すぐに相好を崩し、いつまでも滞在してくれるようにと言った。
久しぶりに家族に囲まれたシエスタは幸せそうで、楽しそうだった。
ウルキオラは紅茶を片手に、窓から月を眺めている。
その、余りにも似合った姿にシエスタは一瞬顔を赤く染め、ぼーっとしたが、すぐに首を振り、雑念を振り払った。
「ウルキオラさん…」
ウルキオラは月から目を離した。
「なんだ?」
「その…竜の羽衣…じゃなくて、ゼロ戦?は飛べるんですか?」
シエスタの言葉に、同じ部屋にいたギーシュ、キュルケ、タバサ、シエスタの父母、そして兄弟姉妹が固唾を飲んだ。
「ああ、飛べる。今す
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