第六章
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第六章
「アンニーナと一緒なら何処でもいい」
「それが答えなのね」
「その通りだ」
まさしくそうだというのである。
「そして一緒に食べるのならだ」
「一緒に食べれたら?」
「何でもいい」
こうも言うのだった。
「わかったな。それではだ」
「そこでいいのね」
「何処でも何でもいい」
二つのことを一緒にして話してきた裕典だった。
「行こう、アンニーナ」
「アンニーナは止めてね」
こう言いはしたがそれでも彼をその祝勝の場に連れて行く杏奈だった。今の彼は普段の明るく邪気のない顔である。あの鋭さは何処にもなかった。
そうして月日が経ちだ。裕典にとって運命の日が来た。それは。
「そう、いよいよなのね」
「そうなんだ」
こう杏奈に話していた。場所は二人の部屋である。
「チャンピオンになるんだ」
「世界タイトルに挑戦するんだ」
また言う彼だった。
「いいな、それでな」
「世界チャンピオンに」
「そうだ、なるんだ」
また言う彼だった。
「次の試合でやっと。それに」
「それに?」
「アンニーナ」
彼女を見据えての言葉だ。
「いいか?」
「いいかって?」
「チャンピオンになったら結婚しよう」
こう言うのである。
「いいな、結婚しよう」
「結婚?」
「そう、結婚だ」
そうするというのだ。
「結婚してくれ。いいな」
「それってつまり」
二人は食事を摂っていた。やはりそれはボクサーのものであり厳密にカロリーと栄養が計算されていた。全て彼の為である。
「プロポーズ?」
「駄目か?」
真剣な、試合の時とはまた違った顔での言葉だった。
「それで。駄目なのか?」
「駄目っていうか」
杏奈はどうかというとだ。戸惑っていたのである。いきなり言われたからである。
「あのね」
「駄目だったら俺はだ」
「駄目じゃないわ」
こうは言えた。
「けれどね。結婚よね」
「ずっと考えていたんだ」
さらに言う裕典だった。
「ずっと。俺はアンニーナと結婚する」
「世界チャンピオンになったら」
「そう、そう告白するって」
「何でそれずっと言わなかったのよ」
「言えなかった」
はっきりとした返答だった。わかりやすいまでに。
「その時になるまで恥ずかしくて」
「それでだったの」
「それでいいか?」
あらためて杏奈に問うてきた。
「チャンピオンになったらそれで」
「返事聞きたい?」
杏奈はまずはこう彼に言ってきた。
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