暁 〜小説投稿サイト〜
Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第16話 雪うさぎ
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


「むぅ……貴方は意外と意地悪です。」
「悪かったよ……しかし、もう何日かしたら此奴らも溶けてしまうな。」

 悪戯っ子のような笑みが一転、物悲しくなる哀愁の色を含んだ一言。

「―――また、作ってあげましょう。次の冬にもう一度、その次の冬にも……」
「なんだか、そう聞くと二世の契り繰り返す夫婦の様だな。……雪うさぎの物語か、なにかの童話でありそうだ。」

「ほんとですね。」

 それに対し唯依がまた作って引き合わせてあげようと口にする。
 まるでそれは、仏教の来世でもまた夫婦となる誓いを立てる二世の契りの様だ。冬が来るたびに出会える、春が来るたびにまた来年に逢おうと一緒に溶けて消ゆる。

 儚く、物悲しいながら、優しい物語に見えてくる。
 雪うさぎの物語だ。

 まるで、輪廻転生を繰り返し寄り添い続ける夫婦の物語を短縮しているようでもある。


「しかし、困ったな。」
「何がですか?」

 不意に忠亮が顎を抑え、何か思慮を巡らす。それに疑問を感じる唯依が問うとまるで待ってましたと言わんばかりにニンマリと皮肉気な笑みがそれを迎えた。

「来年も、再来年も一緒に雪うさぎを作りましょう、なんてまるで恋人みたいな物の言い方じゃないか。」
「―――――あ、」

 指摘され気づく、そして顔が瞬間湯沸かし器の様にボンと破裂して湯気を吹き出しそうな勢いで赤く染まる。
 確かに、まるで恋人か仲睦まじい夫婦が口にしそうな会話だ。

「あの!その!そういう意味じゃなくて……」
「そこまで否定されると逆に傷つくぞ。」

「あ!申し訳ありません!!」
「いいさ、分かっているよ。からかっただけだ―――俺のような変人の朴念仁と結婚する女がいるとしたら相当の酔狂か伊達に違いない。」

 自嘲気に皮肉めいた苦笑と共に肩をすくめる忠亮。その言葉と態度にややムッと苛立ちを覚える唯依。

「確かに大変そうですね。大尉も摂家入りした身ですから、何処かしらの女史を妻として迎える日が来るとは思いますが、こうまで自虐的だと苦労しそうです。」
「む、言ってくれるな。」

 すまし顔で心底大変そうだと言わんばかりの溜息の唯依の言葉に今度は忠亮が眉間に皺を寄せる。

「何か相違ありましたか?自分を夫にする女は苦労すると仰ったのは大尉でしょう?」
「確かにな、俺のような戦うことしか能のない社会不適合者の妻になれるのはよっぽどの悪女か―――お前の様にいい女だけだからな。」

「――――――!!!!???」


 勝ち誇った口調で追撃を仕掛けるが、その反撃に脳天を金槌でぶん殴られたかのような衝撃を伴った言葉が囁かれた。
 優勢が転覆し、ぶくぶくと沈没してゆく。もはや回復は不可能だ。
 普通なら気持ち悪いの拒
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ