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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第16話 雪うさぎ
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「あ、雪うさぎ……」
「どうにもぶきっちょな雪うさぎだがな、」

 苦笑する忠亮。片腕ではうまく作れなかったのか、やや歪な雪の塊に葉っぱの耳と、赤い木の実の目をつけられた雪うさぎが縁の下の雪が及ばない辺りに置かれていた。

「可愛いですよ……どこか愛嬌があります。」
「そう言ってもらえると助かる。」

「でも、どうしてこんなところに置いたんですか?他にも置けそうなところはいっぱいあるのに……」
「此処なら、少しは溶けにくいだろ?」

 雪はやがて解けて消える。
 この雪うさぎもまた日の光によって儚くただの水と解けて消ゆるが運命(さだめ)。―――そこには桜と同種のわびさびがある。

 どこか物悲しい情緒が……。

「―――篁、行き成りで悪いがお前も一匹作ってくれ。」
「え、いいですけど……」

 突然の要求に驚く唯依、忠亮はそんな唯依の答えを聞くと自分の作った雪うさぎにへと視線を向けた―――どこか悲しげな眼差しを。

「すまんな、独りで消え逝くのは此奴もきっと寂しいだろうからな。」
「そうですね。―――この子に恋人を作ってあげましょう。」

 こんな顔も出来るのかと少し驚く。慈しみ、優しさ、悲しみの多様な感情の入り混じった深い表情で自分に雪うさぎを作って欲しいという言う忠亮の眼差しに吸い込まれそうだった。

「恋人か……ははっ、篁も女の子らしいな。ロマンチストだ。」
「か、からかわないでください!!!」

「すまんすまん―――ありがとう。」

 その礼とともに向けられた笑顔を見たとき―――ドキリ、と心臓が高鳴った。
 なんて穏やかで、深い微笑み何だろうか。そして、なんと儚かな微笑み何だろうか。

「ん?どうした?」
「い、いえ何でもありません!!」

 つい見つめてしまった。それを指摘され顔が熱くなる。
 そんな気恥ずかしさを誤魔化すためにやや慌てて雪うさぎ製作に取り掛かる唯依。

「変な奴だな……」

 過剰に反応する唯依に若干呆れ顔の忠亮が居たとさ。





「ん、こんな感じかな……?」

 縁の下で日の光から逃れるように寄り添う二匹の雪うさぎの姿が其処にはあった。
 片方はやや歪な形の雪うさぎ、対してそれに寄り添うのは程々の大きさに纏まりつつもなんとなく丸っこい感じが愛らしい雪うさぎだ。


「なんか、此奴は篁に似ているな。」
「え、そうですか?」

 不意に感想を漏らす忠亮に唯依が小首を傾げた。そんな彼女に忠亮は皮肉気に苦笑しつつ肩をすくめた。

「なんとなく、丸っこい感じが似てる。」
「そんなに丸くないですよ、もぅ!」
「丸くなったじゃないか。」

 ふくれっ面になった唯依をからかう忠亮、からかわれた唯依は唇を尖らせる
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