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戦国異伝
第百九十話 龍王山の戦いその九

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「よし、このままじゃ」
「こちらは交代させて、ですな」
「敵は倒し」
「そうして我等は」
「疲れぬ様にする」
 そうして、というのだ。
「敵は疲れるからのう」
「そしてそこで、ですな」
「敵が疲れたところで」
「いや、このまま戦う」
 攻めることはしないというのだ。
「そうしているだけでよい」
「つまり敵が疲れて、ですか」
「そこで徐々に、ですか」
「あえて攻めることはない」
 この戦ではというのだ。
「自然と向こうは疲れて傷が増えるわ」
「我等との戦の中で」
「そうなると」
「そうじゃ」
 その通りというのだ。
「だからじゃ」
「では今は」
「このまま、ですな」
「攻めることなく」
「その都度入れ替えて」
「そうしていく」
 攻めるのではなく、というのだ。
「我等の戦はここで終わりではないからな」
「はい、では」
「その様に」
 家臣達も頷きだ、そしてだった。
 織田軍は実際に攻めることはなく彼等の調子を守った。そうしてそのうえでだった、戦を進めていくと。
 信長の言った通りだった、毛利の軍勢は。
 疲れが見えてきた、それは元就も感じ取っていた。
「疲れてきたな、皆」
「ですな、どうにも」
「時が経っております故」
「戦になってから」
「そうじゃな、しかしな」
 それでもだった、今の毛利は。
「退く訳にはいかぬ」
「まだ、ですな」
「戦わねばなりませんな」
「そうじゃ、だからじゃ」
 まだ戦うというのだ、そして実際にだった。
 元就は自ら槍を手にしその槍で采配を振るっていた、織田の大軍は入れ替わり立ち替わりで戦うがその彼等とあくまで戦い続けた。
 そうして日が暮れるまで戦った、傷付いた兵が戦場に多く出ていた、倒れた者は双方共多かったが。
「数の差を考えるとな」
「ですな、やはり」
「これは」
 隆元達は夕暮れの中でだ、倒れている者達を見て父に言った。
「我等の方がですな」
「倒れている者の数は違いませぬが」
「こちらは五万、相手は二十万です」
 その数の差、そして割合から考えるとだった。
「我等の負けです」
「そう見るしかありませぬ」
「そうじゃな、しかしじゃ」
 戦った、このことから言う元就だった。
「これでよい、意地は見せられた」
「ではこれより」
「後は」
「もう夜じゃ」
 それでだというのだ。
「もう下がるぞ」
「はい、では」
「夜に紛れて」
「夜に退くからにはな」
 それならばだ、元就はこのことも忘れていなかった。
「兵をよくまとめねばな」
「はぐれる兵も出ますし」
「敵も奇襲してくるやも知れませぬな」
「だからですな」
「ここは」
「わしが後詰を務める」
 総大将である元就自らが、というのだ。
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