第三十三話 神もなくその十
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「絶滅が心配されているわね」
「どちらもね」
「だからここにいるのね」
「その意味でもね」
「そうなのね」
「人間はどうしても業があるから」
厄介なことにだ、人間はその文明の進歩の中で多くの種も絶滅させてもきている。確かにこれは人間の一面だ。
だが、だ。それと共にだとだ、菖蒲は話すのだった。
「絶滅させてしまうことも」
「残すことも出来るのね」
「そうなのよ」
「どっちも人間なのね」
「ええ、だからね」
「人間は悪だけれど善でもある」
「よく言われることだけれど」
菖蒲は一同にさらに言う。
「その言葉は真実なのよ」
「成程ね」
菫は菖蒲のその言葉に納得して頷いた、そしてあらためて水族館の生物達を見てそのうえでこう言ったのだった。
「ここにいる皆も」
「そうよ、絶滅危惧種もいるわ」
「その種を保護してもいるのね」
「その一面もあるわ、ただね」
「それに加えてよね」
「学問研究の意味もあるから」
種の保護と、というのだ。
「こうした色々な生きものを見てね」
「確かにね、子供が多いこともね」
「動物園や植物園もそうよ」
「あれだよな、確か」
薊も言う、魚や甲殻類を見つつ。
「どれも博物館法か何かに入るんだよな」
「そうよ、博物館法で動物園や水族館は博物館という扱いになってるわ」
「勉強っていうか学問の場所か」
「生物学のね」
「理科の授業か」
薊の言葉はしみじみとしたものになっていた、そのうえでの言葉だ。
「そうなるか」
「ええ、そうよ」
「そうなんだな、ただな」
「ただ?」
「いや、学問っていうか遊びの場所だよな」
水族館なり動物園なりはというのだ。
「こうした場所って」
「学問は楽しむものだからね」
「別にそれでもいいか」
「ええ、構わないのよ」
菖蒲は薊にこのことも告げた。
「それでもね」
「そうなんだな、ただな」
「ただ?」
「カブトガニとか掴んだらまずいよな」
「天然記念物よ」
菖蒲の言葉が普段以上にシリアスなものになった、そこにカブトガニがどういった生物かが話に出ていた。
「だからね」
「持ったらアウトだよな」
「万が一の時はね」
「だよな、そんなことになったら」
「また言うけれど天然記念物よ」
それ故にだった、まさに。
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