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二つの顔
第一章
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てもいい。紛い物が宝石になる筈がないのにである。
「何でも武内はね」
「普段はそうじゃないのね」
「まああの一家よりずっと顔はいいわね」
 顔は確かにいいものだった。精悍であり端整ですらある。
「全然ね」
「確かに」
「試合の時なんか凄い顔だけれどね」
 その顔のことが特に言われる。
「もうね。戦士みたいな顔だから」
「戦士なの」
「そうよ、凄い顔になるのよ」
 また話される。
「鬼気迫るっていうかね。刀持ってるみたいなね」
「侍ってやつね」
「それって」
「そうね。侍ね」
 まさにそれだというのである。

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