SS:マッチ、炎、そして少女
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の士気は著しく低下した。
結局サーヤが何者で、何の目的でアーリアル王国にちょっかいを出したのかは不明のままだった。あの無邪気な少女がこんな凶行に及んでいる理由は想像も出来ない。
だが、ニーベルには小さな予感があった。
――あの子とは、またどこかで出会う気がする。
その後、ニーベルは元々続けていた武者修行の旅を再開した。
そして彼は、彼女とはまた別の運命的な出会いを果たし、それを境に大きな動乱に巻き込まれることになるのだが――それはまた、別のお話。
= =
――遡ること、ニーベルがサーヤを見失った頃。
「ぜはっ……ぜはっ……ぜえ……はあ、はあぁぁーーー……」
夜の街を全力疾走で逃げ回ったサーヤは、どうにかニーベルを捲く事に成功して、城下町を脱出していた。
「も、もう……久しぶりの全力疾走も悪くないかなって思ったのに、あのお兄さんスタミナありすぎだって!」
走りに関しては絶対の自信があったのに、まさかあそこまで肉薄されるとは思わなんだ。
「うう……まさかスラムの流星とまで謳われた私がいいトコ出のお坊ちゃんなんかに………」
『ヤレヤレ、君は相も変わらず愉快な任務をこなしていると見えるねえ。羨ましい限りだよ』
「お、ルーさん」
懐に忍ばせていたメダルから声が響く。特殊な神秘術式による長距離音声送受信だ。
声の主はサーヤが「ルーさん」と呼ぶ、言うならば仕事上での先輩に当たる。
『例の松明は使いこなせているかね?それは六天尊にも対抗しうる正真正銘の最終兵器だ。我等が女神さまが最も適性の高い君のために調整まで施した超一級品だ』
「あはははは〜……若干振り回されてます、ハイ」
実を言うと、サーヤはこの『ヘファイストスの松明』を託されてから1年ほどしか経っていない。未だにこの恐るべき力を込めた武器を扱えるように訓練はしているのだが、使用の度にある強烈な反動があるために、未だ使いこなすまでには至っていなかった。
というのもこの神器、使用した際の力が強ければ強いほどに、その炎を具現化させるための神秘を溜める時間が引き伸ばしされるのだ。
ニーベルの目の前では意地を張って強がっていたが、あの時は松明の先端に炎を灯したままにするのが精いっぱいの状況だったのだ。
別に接近戦でも戦って負ける気はなかったけれど、念の為だ。万が一にも捕まったとあっては他のメンバーに申し訳が立たない。
『まだ、ヒトは殺せないかね?』
「………当分は無理っぽいです。それが一番手っ取り早いとは分かってるんですけど」
『それも良きかな。我らが女神さまは、目的さえ果たせれば過程は好きにしてよいとおっしゃっている。汚れ役は汚れた手の者に任せたまえ』
「あははは……私だっ
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