SS:マッチ、炎、そして少女
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を持っている。
お前は、何者なんだ。
「で、今の自分じゃ勝てないから今回は見逃そうとか!」
あくまで余裕は崩さずににやにや笑うサーヤに、若い男は内心で覚悟を決めた。
彼女の言う事は正しい。確かにその考えも頭を過った。彼女が本気でこちらに攻撃すれば――十中八九防ぎきれずに焼死するだろう。利口に生きていたいのなら、ここは見逃すべきだ。
だが、それでも――と、ニーベルは歯を食いしばる。
ここで黙って引けば、自分自身を許せなくなるから。
弟との間に立てた誓いを破ってしまうから。
見て見ぬふりをして、素知らぬ顔で悪から目を逸らしたくないから。そんな最低な自分など、存在する価値がない。
「我が名はニーベル・フォルツ・ブルグント。愛国の徒として、無辜の民を焼いたお前を黙って帰す気は毛頭ない」
「無辜の民、ねえ………知らないってのは幸せだ。いいよ――あたしの名前はサーヤ!その喧嘩、特別に付き合ってあげる!」
サーヤが肩に担いだ神器を振り上げ、槍のように振り回しながらニーベルに突き付けた。
ニーベルもまた、抜き放った剣を正面に構える。
空気が、張りつめた。
「………ただし、果てしなく後ろ向きにねーっ!!」
瞬間、サーヤは神器を担いだままバック走でその場を離脱した。
一瞬その姿に呆気にとられたニーベルは、やがて自分がからかわれたことに気付いて慌てて追いかける。
「なっ……てめぇふざけんなコラぁ!!人をおちょくってんのかこのチビ女!!」
「ふざけてないけどさ!さっきの爆破でかなり力使っちゃったし、あまり暴れすぎると六天尊が動く可能性あるんだもん!寧ろ全力で見逃してください!」
「くそ、なんでバック走で俺の全力疾走より足が速いんだよ!ちょっと気持ち悪いわ!!」
「ははははっ!……あ、ひとつカン違いしてるみたいだけどー!!」
鬼ごっこをして遊ぶようにけらけらと笑うサーヤは、必死に追いすがるニーベルに一声かけた。
「あの炎はねー!熱いし燃えるけど、ヒトは殺さないよう定義付けしてあるからー!トラウマは残るかもしれないけど、死者は一人も出てないよーーっ!!」
「なっ……なんだとぉぉぉーーーー!?」
「あははははっ!またいつか会おうねー!!」
結局、必死の追跡もむなしくサーヤは姿をくらました。
翌日確認を取ると、確かに彼女の言うとおり死人は出ていなかった。
爆発によって吹き飛んだ破片などで重傷を負った者はいたものの、不思議な事に発火したものに触って火傷したものはいても、炎そのものに焼かれた者は一人もいなかった。
しかしこの事件で主要な酒場が壊滅したことと、下手をすれば都市に壊滅的な打撃が与えられていたであろうことから、アーリアル王国兵
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