SS:マッチ、炎、そして少女
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のかは知らないが、一つくらいは買ってやってもいいだろう。どうせこれから酒場でもっと金を使うのだ。その話の種にでもなれば元が取れるだろう。
マッチの箱を受け取った男は、頭を下げる少女に小さく会釈をして、「身体に気を付けろよ」とだけ言い残してその場を去っていった。
それを遠目に見送った少女は、ふふ、と笑みを漏らす。
「さてはて、下ごしらえはこんなものでいいかな?誰も彼も純真すぎてイケナイね?見た目に騙されて直ぐにマッチ買って行っちゃうんだもん!」
悪戯猫のようにニヤニヤと笑った少女は、そのまま路地裏へと身を翻す。
彼女は路銀を稼ぐためにマッチを売っていたわけではない。本当に重要なのは、「マッチを持った人間が町中に散らばる」ことそのもの。
「この時間帯にうろついているおっさんたちはどいつもこいつも酒場目当て。そしてこの時間帯なら酒場には末端の兵隊どもが集まってくる!つまりああやって子供のふりしてマッチを売れば、後は各々好きな酒場に散らばっていくわけでっ!」
路地裏に放置されたゴミを飛んで避けながら、少女は笑いが止まらないとでも言うように一気に駆け抜け、町の外へつ続く道へと出た。
「そこで連中は『今日、道端で珍しいものが売ってたんだ』と酒場の席でマッチ箱を取り出すのです!だけど実はぁ〜……そのマッチ、細工されてるよっと!」
店もない夜の小道には誰もおらず、人目の有無をしっかり確認した少女はその辺に立ち止り、残りのマッチをバスケットごと放り投げた。投擲先には町の大動脈となる大通りが存在するが、今の時間帯にはそこに人など通らない。例え通ったとしても少女にとっては問題の無いことだった。
「そう、実は!このサーヤちゃんが持つごんぶとマッチでちちんぷいぷいと呪文を唱えると――?」
その服の何所に入っていたのかと聞きたくなるほどに大きな箒サイズのマッチ棒を取り出したサーヤと名乗る少女は、マッチ棒で自分を中心に円を描いたのちに、マッチの先端を地面に激しくこすりつける。
マッチの先端に火が灯った。そしてそれに呼応するように円が輝き――
「なんと、大爆発して超高熱の炎を如何なく放出するのですっ♪」
――アーリアルの城下町に、爆音とともに数十の火柱が高らかに立ち上った。
彼女が配ったマッチ箱を中心に起こった大爆発の炎だった。
建物全てを焼き尽くすような地獄の高熱が、町を赤く染める。
炎は店の外へも飛び出し通行人さえも焼かれ、更には火事で近隣もパニックになった。
すぐさま城より消防部隊が出動するが、そんな彼らを待っているのは――石畳さえも焼ける紅蓮の炎によって破壊された大通り。先ほど彼女がバスケットを放り投げた、まさにその場所で立ち往生を余儀なくさせる。
僅か数分前
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