第15話 破綻
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が脇に避けた1人に向いたその隙を突いて、懐から脇差を取り出すことに成功していた。しかし、声を上げて振られた脇差の一閃は豪快に空振りに終わり、身を屈めた小柄な侵入者が、ボスの大きなアクションによって空いた懐にサッと潜り込んで心臓にナイフを突き刺した。ボスの大柄な体が痙攣し、口から血をどっと吐いて動かなくなる。
「あ、あああ……」
最後に残った構成員は、腰を抜かして床に座っていた。カエルのように開かれた足がピクピクと震え、股間には水たまりができている。目には涙を浮かべて、痙攣したように首を横に振っているが、無慈悲に破裂音が響き、無様な顔面の額から血をプッと吹き出させて、床に倒れこんだ。
「…………」
小倉はローテーブルに突っ伏した姿勢のまま、顔だけを上げて様子を見ていた。信じがたい光景だった。自分をさっきまで嬲っていたヤクザ達が、突然圧倒的に葬られていく。人が死んでいくのを見たのはこれが初めてで、血をここまで大量に被ったのも初めてだったが、散乱する屍より何より、小倉の目を釘付けにしていたのは、拳銃とナイフを両手に携えた侵入者の姿そのものだった。
小柄だった。体に密着した、バイク用のレザースーツみたいな服装をしているが、その華奢な体の、無駄が削ぎ落とされたかのような控えめで素朴な曲線……顔を隠すマスクから見える目ともども、小倉には見覚えがあったのだ。
「……逃げるわよ、小倉くん」
そう言って、マスクを外した後に現れるのは、艶やかなショートの黒髪、形良く尖った顎、スッと伸びた鼻筋、薄い唇、?だけ赤く火照った白い肌。高田紫穂その人の顔だった。
「高田……」
小倉は、イマイチ状況を整理し切れない。なぜ?なぜ高田がここにやってくるんだ?両手に持ってるアレは本物?いや、本物じゃないはずがないじゃないか、たった今アレで5人、一瞬で殺ったんだから。え?殺った?高田、何の躊躇いもなく人を殺した?ちょっと待て、犯罪だろ、いくらヤクザとはいえあんなあっさりぶっ殺して良いものなのか?そもそも、窓から入ってくるってどういう事だ?この部屋、二階だぞ?
色んな疑問が脳内に溢れ、小倉が固まってしまっていると、部屋のドアの向こうから、慌ただしい足音が多数聞こえ始めた。
「……ッ」
高田は小さく舌打ちすると、レザースーツのベルトにいくつかくっ付けている球体の一つを手に取り、その球体の上部についたピンを口で噛んで勢いよく引き抜いた。その球をドアの方に放り投げた高田は、ローテーブルに突っ伏したままの小倉を、華奢な体からは想像もできない力で引っ張った。
「伏せて!」
鋭く言いながら、高田はソファの影に小倉を倒しこむ。そして小倉を守るように、その上に覆いかぶさって抱きしめ、身を硬くした。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ