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青い春を生きる君たちへ
第15話 破綻
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わらない。突然、他人を貶めて、無為に犠牲にする……そんな冷酷な真似をしたって、不思議でも何でもないではないか。実際、この前の工業地帯での日本赤軍のテロを手引きしたのだって田中だ。自分の都合のために関係ない人間を巻き込んで恥じないブッキレた野郎だってのは、あの件でも分かっていた事だ。そんな奴の言うことを、何故信じてしまったか。何故自分はここまで来てしまったのか。

簡単な事だ。裏切られるより、裏切る方が怖かった、ただそれだけだ。裏切られるのは、まだ慣れていた。しかし、自分から裏切って、見捨てるとなると……自分が裏切られた経験があるだけ、それをするのは怖い。裏切られた痛みを理解していたから、自分が裏切る側に回る気にはなれなかったし、裏切ってしまった自分を許してやれそうにもなかった。結局、そういう恐怖に突き動かされた消極的判断は、信頼なんかではない。それを田中も分かったのだろう。愛の実験は、既に破綻していると……

構成員の一人が、火の点いたタバコを腕に押し付けてきた。熱さ、痛み、小倉は呻く。暴れようとしても、強く押さえつけられていて身動きがとれない。

こうやって、地味にすり潰されて少しずつ死んでいくのか。小倉は覚悟を決めた。自分の夢を裏切ったあげく、最後は他人に裏切られて無惨に死ぬか。もうまったく、くだらない……

小倉が自分の意識を閉ざそうとしたその時、パリィーーーン!という、豪快な音が部屋に響いた。


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「んっ!?」


構成員の一人が、ローテーブルに押さえつけられている小倉から視線を上げる。それと同時に、破裂音が連続して響いた。構成員は頭の数箇所から血を吹き出して、目を見開いたまま倒れこむ。小倉の顔に、構成員の血が飛び散った。

一人目がくたばるのを待つまでもなく、侵入者は床を蹴って跳躍する。次の標的は小倉を押さえつけている二人だ。一人はその小さな影の素早い動きに、咄嗟に小倉から飛び退いたが、もう一人は律儀にも、小倉の拘束を続けてしまった。


「がっ!」


侵入者が飛びかかり、全体重をかけて突き刺したナイフが、小倉に覆いかぶさっていた構成員の首筋に突き刺さった。その切っ先は延髄を的確に切り裂き、瞬時にナイフが引き抜かれたその傷からどくどくと血を溢れさせた構成員は絶命する。


「なろォ……」


先ほど飛び退いた1人が、スーツの上着の内側に手をやる。何か得物を手にする気だったのだろうが、その手に握られた黒光りする拳銃が引き抜かれる前に、甲高い破裂音がまた何回か。銃を握った手に力が入ることも無く、構成員は倒れこんだ。


「だぁあああああああ」


ソファに座っていたボスは立ち上がり、侵入者の視線
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